Little goldfish 2 - 3/5


さて、そういう成り行きで網代は単身コンビニに向かったわけだが。

「わあ・・・ううん、これはちょっと参ったわねえ。」

普段だったら兎も角、隣地で祭りをやっているおかげで、コンビニは大盛況だった。
客が通路で押し合いへし合い、レジは長蛇の列。

これはちょっと絆創膏が売り切れてるパターンまで想定しなければ、と思いながら網代が進んで行くと。

(・・・あ、あった!)

やった、ラッキー。最後の一個である。

(良かったわ。此処になかったら、もう少し先のコンビニまで足を伸ばさなきゃいけないところだっーーーー)

「あっ。」
「あ。」

反対側から伸びてきた手と、網代の手がぶつかった。

これは気まずい。
最後の一個である。安易にどうぞどうぞと言えないが、おそらくあっちも同じ状況。

「ええと・・・」
「あら、ごめんね・・・ん?」
「はい?」
「・・・・間違ってたら失礼やねんけど、網代茉奈花ちゃんやろか?」
「え?」

「初めまして、忍足恵里奈です。侑ちゃんがいつもお世話になって。」

そう言って微笑む顔は、やっぱり忍足にどこか似ている。




恵里奈の友人もやはり靴擦れしていて、トイレで貼ってくると言って中座した。
網代は今、恵里奈とコンビニの前で絆創膏の残りが返ってくるのを待っている。

「堪忍な、待たせてもうて。」
「いえいえ。分けて頂いてるのはこちらですから。」

おおきに、と恵里奈は笑う。

「・・・ところでなんですけど。」
「うん?」
「どうして私の事を・・・というか、私の顔をご存じなんですか?」
「写真で。」
「写真?」
「まあ、写真ていうと写真は写真やねんけど。侑ちゃんがフォーム確認のために撮ったやつに、映りこみしとって。私最初、侑ちゃんが女の子の写真見てるわあ、なんて思ってそらもうびっくりしたわあ。」
「あはは!

・・・そうなら、良かったんですけど。」

恵里奈はちょっとだけ目を見開いた。

今の一言は、一言の中に大分色んな情報が詰まっているが。

「・・・茉奈花ちゃんはあれやね。」
「はい?」
「侑ちゃんの得意なタイプやね。」
「ふふっ。そうですね、分かります。私も、侑士君は得意なタイプですし。」
「やろねえ。せやろと思うわ。・・・なあ、茉奈花ちゃん?」
「はい。」

「茉奈花ちゃんは、侑ちゃんと居って楽しい?」

弟を好きか。とは聞かない。

それはもう良い。もうさっきからよく分かるから。
それよりも、恵里奈が気になるのはこっち。

普通ははいと答える場面でしかない。
好きな人と一緒に居て楽しいのは当然だけど。

「・・・楽しい、っていうのとは、ちょっと違うかな?」
「あら、そうなん?」
「楽しくないわけじゃないです。でも、それよりも・・・」
「よりも?」
「スリリングな気持ちになって、それが好きなんですよね。」
「・・・・ふうん?」

「お待たせー!」

息を切らして、恵里奈の友人がやっとコンビニから出てきた。
因みに息を切らしているのは店内を走ったからではない。ぎゅうぎゅうの人込みの中を無理やり通ったからだ。

「ごめんごめん!えーと、網代?茉奈花ちゃん?はい、絆創膏!」
「有難うございます!じゃあ私、友人を待たせていますのでこれで。」
「茉奈花ちゃん、月並みやけどこれからも侑ちゃんをよろしゅうにね。」
「はい、勿論!では失礼します。」

そう言って、早足で去っていく網代を2人は見送った。

「何か大人っぽい子だよねー。ねえ、恵里ーーー」
「嘘の上手い子やねえ。」
「・・・え!?」
「あ、ちゃうでちゃうで?嫌いとか良くないとか、そういう意味やないで。何ていうのんかなあ・・・距離を取るのが上手いていうか。人を躱すのが得意なんやろな。」
「そ、そう・・・?」

恵里奈は気づいていた。

本当は、スリルなんて嫌いなくせに。

「・・・ねえ恵里奈ってさあ。」
「ん?」
「人のプロファイリングそんな上手いのに、自分が彼氏上手く作れないのはなんで?」
「放っといてんか!」