「いくで。ちょっと我慢してな。」
「うん・・・・いたっ!いたたたたた・・・!」
言って出血はしてないから大丈夫と思っていたが、結構消毒液が沁みる。
普通に痛い。
「今日のお風呂痛そうっ・・・!」
「せやなあ。あれやったら、家族に連絡とかして傷パッドみたいなん買って貰っといてもええで。最近のんは剥がれにくいし。」
「うん、そうする・・・・」
はあ、と可憐は溜息を吐く。
「私、何回同じような事したら気が済むんだろう・・・」
「そないにいっつも靴擦れしれてるん?」
「く、靴擦れの話に限ってるわけじゃなくてっ!こう・・・負傷が多いっていうか、その度に迷惑かけて・・・」
「まあ、怪我とか人よりちょっと多いなて思うのんは否定出来へんけど。」
「う・・・」
「でも別に、わざとやってるわけやあらへんやろ?それこそ合宿の時に倒れたのなんかは、一生懸命やってくれてたからやし。」
「いやでも、これは私の不注意っていうか・・・軽く、」
「・・・可憐ちゃん、さっきから軽く思っとったとか甘くみてたみたいな事言うてるけど、ほんまなん?」
「え?」
「いや、別に嘘やて言うてるわけとちゃうけど。でも、大きい理由てそれやのうて、多少痛いかも知らんけど、それでも履きたかったんとちゃうかと思うてん。」
それ。
・・・は。
「・・・・・・」
「・・・ちゃう?」
「・・・・それも、あった、かなっ。」
「あっ『た』?」
「うん・・・もう良いんだっ。満足したからっ。」
可憐はちょっと足をぶらつかせた。
忍足の言ってる事は、部分的には正解である。
確かに履きたかった。それは事実だ。
でも、今にして思うと、その履いてみたかったのもっと根元にある理由は浴衣で自分を着飾ってみたかったから。
そして、忍足にそれを見て欲しかったのだと思う。本当に、今振り返ってみて初めて自覚する事だけど。
でも、ここまで上手くいかないともう良いかなという気になってくるのも事実だ。
結局こうして失敗に終わるし。
そもそも、自分はファッションに詳しいわけでもなんでも無かったのに、軽率にチャレンジしてみた結果がこれ。
「・・・・・・」
「来年は、サンダルを買うねっ。」
「・・・・・・」
「下駄の方は捨てちゃうのは勿体ないから、美梨・・・妹がもう少し大きくなって、履けるようになったら譲って、」
「絆創膏貼って履くのはあかんのん?」
「え?」
「それやったら履けるやろ?もうどこが痛うなるかは、今日のこれでわかったわけやし。」
「・・・でも、絆創膏貼って下駄なんてかっこ悪いし、」
「そんなん思わへんて。」
「思われるよっ!」
「俺は思わへんで。」
「・・・そこまでして頑張って履くようなものでもないよっ。」
自分でも良い。
他人でも良い。
誰かの為だから人は頑張れるというのなら、可憐は最早頑張る理由など持っていない。
どちらかというと頑張りたくない。
頑張った結果、こんな惨めさしか残らないのなら。
「・・・・・まあ。」
「・・・そうでしょっ?」
「そうやな。」
「・・・ねっ。」
「俺の為に履いてとは言われへんからな。」
可憐は意識が急速に自分の内側に向かっていくのを感じた。
以前の自分なら、どういう意味?なんて無邪気に聞いていただろう。
でも今はもう違う。
聞けない。
他意を期待してしまうから、他意が無い事を知りたくなくて聞けない。
「可憐ちゃーん!お待たせー!」
網代が戻ってきた。
忍足はお疲れ、なんて言って立ち上がって絆創膏を受け取る。
勿論会話は切れた。
でも可憐には、残念に思えば良いのかそうでないのかの判断すらも今はもう出来ない。