Family moments 1:Repetition 1 - 1/6


紫希はエアコンの効いた車内に座っていた。

「ありゃ、また信号だ。も~、本っ当に良く止まるなあこの辺は・・・」
「ごめんね、京都って車に優しくない所が多いから・・・」
「お父さん、ガソリン大丈夫ですか?」
「んー、多分持つと思うけど・・・あ、動いた!よしよし、良いぞー、このままもうちょっと先まで抜けられれば・・・」

紫希の父、真の実家は超々近々の距離にある。何せ神奈川で、実は普段からちょくちょく会っているのだ。

だから、紫希にとって田舎へ行くというのは専ら母側の実家。
京都行きを指す事になる。

(外が暑そうです・・・・)

冬は底冷え、夏は照り返し。
そんな京都の中を抜け、やっと見えてきた田舎。

「ふう、着いた着いた・・・」
「じゃあ俺、裏に車回して来るよ。」
「うん、お願いね。紫希ちゃん、行こっか。」
「はい。」

母の実家、荻倉家の家屋は大きい。
そこそこ金持ちなのもあるが、祖父自身が大工だったおかげで、建てた当時色々各種経費をつてで浮かせて建てることが出来たからだ。

割と立派な門扉を抜けて、母が持っている鍵で玄関を開けると、中はエアコンが効いてひんやりとしている。

「お母さーん!お父さーん!帰ってきたよー!」

母が中に向かって呼びかけると、間もなくぱたぱたと祖母の足音が聞こえてくる。

「まあまあ、お帰りなさい雪乃。紫希ちゃんも、いらっしゃい。久しぶりねえ、遠い所をよく来たわねえ。」

祖母、美玲のおっとりした微笑に、紫希も笑顔が綻んだ。



「孝浩君は?」
「お兄ちゃんは、今回はパスだって。合宿と被っちゃって。」
「そうなの。剣道だったわよね?大変ねえ。紫希ちゃんは、中学でもずっとバンドよね?」
「はい。続けてます。」
「お義母さん・・・ああ、居た居た!お邪魔します!」
「ああ、真君。車停められた?大丈夫だったかしらねえ。」

住まいこそ京都だが、関西弁なのは実は祖父の圭太郎だけである。
嫁いできた美玲の出身は千葉だし、父の真も神奈川育ちなので、実は母の雪乃も関西弁はあまり使わない。
したがってその子供の紫希と紫希の兄は、もう標準語しか操れない。
とどのつまり、京都に居るのに此処に居る全員が標準語。

「お父さんは?」
「ちょっと、昔の部下が仕事の相談に来たとかで出て行っちゃったのよねえ。でも、皆が来るのはちゃんと覚えてるから大丈夫よ。夕ご飯までには帰ってくるわ。」
「・・・・・・・」

夕食まで。

紫希はちら・・・と時計を見やった。

「あら、どうしたの紫希ちゃん?」
「実はその・・・夏休みの課題でレポートがあるので、清水寺に行こうかと思ってたんですけど・・・」
「ああ、行っても良いよ紫希ちゃん。」
「でも・・・」
「お祖父ちゃんには言っておくよ。大丈夫、気を悪くしたりしないから。」
「そ、そうですか?それじゃあ・・・」

こうして紫希は、着いて1時間後には清水寺に向かう事になった。