Family moments 1:Repetition 1 - 2/6


「はーーーーあ・・・・・」

菊丸英二は大きなため息を吐いていた。

夏なんだし家族で京都に旅行に行こうという事になり。
だから意気揚々とやってきたのは良いが、ついでに夏休みの課題を片付けようとしたのが間違いだったのだ。

4人も上に兄や姉が居るんだから、誰か一人くらい同行してくれるだろうと思っていたのだが、それが間違い。

そんな予定じゃなかったし。そもそもそんなに寺社仏閣に興味ないし。
急に言われても困るわよ。もう一人で行って来れる年でしょ、行ってきなさい。
なんて言われて、結局一人で今赴いているわけだが。

日本史は好きだし得意だし、別に一人で見られるでしょと言われれば見られるけど。
でも菊丸はそもそも、賑やかなのが好きなのだ。
なるべく誰か、同行者が欲しい。

(って言ってもなぁ~・・・そんな都合よくいかないし。もーっ!誰か一人くらいついてきてくれても良いのにさ、兄ちゃんも姉ちゃんもケチなんだから!)

「はい、一人ですよ。」

もう良いよもう、な気持ちでチケットの列に並んでいると、真後ろから女の子の声がして、菊丸は振り向いた。

「・・・・・・」
「はい。はい。ええ、皆お祖母ちゃんの家に。大丈夫ですよ、もう中学生ですから。清水寺に行って、帰ってくるだけです。大丈夫ですってば・・・・小さい子じゃないんですから・・・はい。はい。じゃあ。」

ふう、と軽く溜息を吐いて、紫希は通話を切った。
兄からもう着いたか、なんてLINEが入ったから、着いて自分は今清水寺、なんて返事したらもう大変。
誰か着いてないととか、誘拐だとかなんだとか、兄は自分の事を幾つだと思ってるんだろうか。

やれやれなんて思いながら鞄にスマホを入れていると、前方から声が降ってくる。

「ねえねえ!」
「え・・・・はい?」
「あのさ、ごめんなんだけど、今の電話聞こえちゃってたんだけどさ。一人なの?」
「え・・・・はい。」
「そっか!ねえねえ、ちょーっと言いづらいんだけど・・・良かったら、一緒に見学しない?」
「え?」
「俺学校の課題があるから、今日見ないと行けないんだけどさ~!家族だーれもついてきてくれなくって。俺住んでるのは東京だから、こっちに友達が居るってわけでもないんだよね!でも一人って寂しいし・・・どう?駄目?駄目なら良いけど・・・」

紫希が先ず思ったのは、この子。
紀伊梨に似ているな、という事であった。

何から何までそっくりというわけじゃないが、どうもこう明るい雰囲気というか、天真爛漫な気さくさが似ている。
言ってる事も、取りようによってはかなり怪しいのだが、どうもこう胡散臭さを感じない。
駆け引きとか他意とか、そういう概念の外に居るような人の感じがする。

から。

「・・・・そ、そちらがそれでよろしいんでしたら、」
「本当!?やったー!あ、俺!菊丸英二!」
「・・・春日、紫希です。よろしくお願いします。」

全開としか言いようのない笑顔に、やっぱり紀伊梨に似ているなあと紫希は思った。



一方荻倉家では、紫希の両親+祖母がまったりお茶をしていたのだが。

「それで?」
「え?」
「雪乃、今年のお祭りは?」
「お母さん!もう、分かってて言ってるでしょ!もう・・・・」
「ふふふふっ!ねえ真君、雪乃はねえ、本当に毎年毎年この時期になると、お祭りに絶対行く行くってそわそわしててねえ。」
「お母さん!」
「あははっ!でも、俺も似たようなものでしたよ。」

ちらり、と夫から視線を感じて雪乃は赤くなった。

紫希の両親の出会いは、なんとここ、京都の夏祭りである。

幼かった小学生の雪乃は迷子になっていた所を、家族で来ていた真に助けて貰った。

そこからお互い毎年、夏になると夏祭りでお互いに会った事を思い出し。
なんと次の年も同じ祭りで出会い。
その次もその次も同じことを繰り返し、家族旅行で来れなくなっても中学生になった真は雪乃に会いに、単身夏祭りに訪れた。

本人達も周囲の者たちも、まさかそんな出会いでとか思いつつ、高校生の頃には付き合い始め。遠距離になり。結婚まで辿り着いた時には、周り中から嘘だろ・・・と呟かれたものだった。

「紫希ちゃんも、もしかしたら清水寺で出会いがあるかもしれないわねえ。」
「・・・・うーん。」
「あら?」
「紫希ちゃんはね・・・別にもう、清水寺まで行かなくてもっていうか。ね?」
「なあ?」
「あら?あらあらあら、これはもう一杯お茶が必要ねえ。淹れてくるわね?」

両親は顔を見合わせて笑った。