「はあああああ・・・・・」
「だ、大丈夫?」
「だ、大丈夫です、大丈夫です・・・」
「うーん、見えないけどにゃ~・・・」
清水寺という場所の特徴は沢山あるが。
その内の一つに、非常に高い物見台がある、という事がある。
所謂清水の舞台という奴で、此処から飛び降りるという言い回しは、つまりそれだけの決死の覚悟的な意味合いの言葉である。
この舞台が紫希は昔から高くて苦手で、ずっと一番内側にへばりつくようにしている。
「っていうか、そんなに高い所苦手なのに、なんで清水寺に来たの?清水寺に行くこと!他のとこは駄目!って学校から言われたの?」
「そ、そうじゃ無いんですけど・・・書きたいテーマ的には、清水寺が一番良くて・・・」
「ふ~ん?まっじめー。ちょっとも近寄れにゃいの?」
「う・・・・が、頑張ります・・・」
「あ、良いよ良いよ!頑張るくらいだったら別に無理しないで良いからさ!あ、でも。俺ちょっと、一人で見てくるねん!兄ちゃんとか姉ちゃんとかにさ、俺だって満喫してるよん!って自慢してやるんだ!」
「あ、ああ・・・はい・・・」
菊丸は軽快に言うと、平気な顔で舞台の端まで行ってしまった。
(・・・・遠い・・・・)
菊丸が遠い。
というか、来ている拝観客が皆遠い。
皆どうしてあんなほいほい縁の所に立てるんだろう。
いや、理屈は分かるのだ。手摺があるし、そうそう落ちない。
分かっているのに。
「・・・・・!ううう・・・」
ああ駄目。この、床がちょっと下り坂になっているのがもう駄目。怖い。
「・・・・・」
「オッケーオッケー!撮れたよん、お待たせ・・・あー!どうしたの、こんなとこまで来て!」
「えと、あの、」
「無理しないで良いよって言ったじゃん!大丈夫だよ、俺置いていったりしないって!」
「そ、そうは思ってないですけど、」
「大丈夫だよん、もう写真は撮れたし!行こう行こう!ほら、あっちは外見えないからさ!」
「あ、は、はい・・・」
紫希はちらりと舞台の外を見やった。
抜けるような夏の青空が京都の街並みに重なっていて綺麗だった。
近くでは見られない。