Family moments 2:My dream 1 - 1/5



今日も晴れ。
おまけに暑い。

正にリゾート日和である。

「ふっふふーん♪ふっふふーん♪行こうセーシェルー♪」
「紀伊梨姉ちゃん、足バタバタさせんなよ、みっともないから・・・」
「えー?良いじゃない、私もやっちゃおー♪」
「沙綾姉ちゃんまで・・・」

はあ、と溜息を吐く五十嵐家第三子、蓮の後ろでは、両親がスマホを見つつ何か話し合っている。

今日は家族旅行の日。
五十嵐一家はセーシェルへ旅立つ。

空港は多くの人が行き交い、自分の乗る便を今か今かと待っている。
紀伊梨もその内の一人。

「何か喉乾いちゃったなー・・・おかーさん!ジュース買ってきて良いー?」
「良いよ。あ!でも一人は止めてね、一人は!誰かと一緒よ、今日ばっかりは遅れたら大変!電車と違って、一本後のに乗ろー!なんてわけにいかないからね?」
「じゃあ、俺一緒に行くよ。」
「よしゃー!じゃあ行こう行こう!」




というわけで紀伊梨は蓮を連れて、自販機コーナーに来ていた。
隣には土産の店舗が広がっていて、ナチュラルにジュース買ったら見ようと思っている紀伊梨は、やはりどこかスケジュールに対して不安感が薄い。

「どれが良い?お姉ちゃんがボタン押してあげるよ?」
「いや、姉ちゃんが届く奴は俺にも届くから・・・じゃあ俺コーラ。」
「そーお?じゃあ紀伊梨ちゃんはビックル!」
「はいはい。」
「あー!」
「え?」
「紀伊梨ちゃんがボタン押したかったー!もー!」
「そんな事くらいでいくら何でも・・・!」
「なんでもじゃないよー!

ずるいよ、蓮!」

バサッ!

と、紙の束っぽいものが落ちる音を紀伊梨の耳が拾った。

「ん?」
「わー!大変だ大変だー!」
「あ、ちょ、紀伊梨姉ちゃ・・・あーあ・・・」

蓮はがっくりと肩を落とした。
この姉はすぐこうやってトラブルに首を突っ込む。
そうなのだ。紀伊梨はなんだかこの性格から、いつも自ら台風の目になっていると思われがちだが、こうやって人様のトラブルに寄っていくのもまた習性なのだった。

「だいじょーぶー?」
「あ、ああ。悪かった、すまない。少し手元が狂って・・・・」
「てもとがくる・・・?手が滑ったにょ?あ、れーん!そこの奴も取ってー!」
「はいはい。」
「・・・見た所、そこの彼は君の弟か。」
「ん?うん!蓮は紀伊梨ちゃんのおとーとです!」
「そうか・・・」
「どったの?」
「・・・いや。何でもないんだ。君の弟の名前が・・・・そうだな、知り合いに似ていてね。一瞬、彼が居るのかと思って、驚いてしまったんだ。」
「あー!あるよねそーゆーの!紀伊梨ちゃんも学校で五十嵐さーん!とか言われて、別の五十嵐さんでも一瞬どきっとしちゃうしー!」
「紀伊梨姉ちゃん・・・」
「え?何?」

蓮は、彼の散らばしたノート類を拾いながら脱力してしまう。

わからないのだろうか、今の台詞。
知り合い、と言ってるくせに、もしや此処に居るのかと思ったら動揺して持ち物を取り落とすのだ。
何かわけありというか、本当は知り合い程度の話ではないのは明らか。

「ねー!何何ー?」
「後で!後で教えるから!すいません、これ落ちてたやつ。」
「ああ、有難う。本当にすまなかった。」
「いえ、こっちこそ何か・・・無神経な事言って。」
「ちょっと待って、無神経って私の事!?どこが!?今紀伊梨ちゃんどこが無神経だった!?」
「・・・・ふふっ。」

すまない、無神経なんかじゃない、と笑いながら言う眼鏡の男子に、蓮は良い人そうだなあなんて思う。
ついでに、散らばったノートの中身も多少見えてしまったのだが、どう見ても姉には理解出来そうもない数式だのドリンクのレシピだのが書いてあって、べらぼうに頭が良さそうだなとも思った。