Family moments 2:My dream 1 - 4/5


「じゃー乾っちはリラちんと同じホテルなの?」
「そうだ。偶々偶然だが、隣室に居てね。歌っているのが良く聞こえる。」
「へー。」

乾は、外に出ようとしてホテルから少し歩いた所で、やっぱり飲み物を持参しようと部屋に戻りかけたのだ。その時にエントランスで紀伊梨を振り切るリラと、振り切られて立ち尽くす紀伊梨に出会ったのである。

今2人はビーチ・・・というか、ビーチが見えるベンチまで移動して、リラの事について話していた。
リゾートについてやる事それなのか、と言われるとまあそれもそうなのだが、紀伊梨としてはやはり気になる。

「えー、でもそれじゃーやっぱり歌ってるんじゃんかー!何言ってるかよくわかんなかったけど、Noって言われたのは紀伊梨ちゃんでも分かりますよっ!」
「ああ。どうやらわけありらしいな。」
「わけ?」
「部屋でもどうも、歌いにくそうにしているからな。親と揉めている雰囲気も見受けられる。」

おかげでというか、隣室に居る乾家は実は結構気まずい空気が流れる場面があったりもしている。
ふと静寂が訪れた時なんかに隣から大声が聞こえてきて、皆ちらちらと気づかわしくそっちを伺うも、他人の事情に首を突っ込むわけにもいかず。

「やっぱお喉が痛いのかなー?」
「それは違うな。」
「そーお?」
「少なくとも、咳き込んだり喉を抑えたり、体調が悪そうな様子は見受けられない。」
「へー・・・」
「おそらく理由は、精神的なものだろう。いずれにしろ、俺達が解決出来る事じゃないが。」
「ふーん・・・もったいないなー!あんなに綺麗な声で歌うのになー!あ!ねえねえ、乾っち!貴女の歌は綺麗です、って英語で何て言う?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・あり?にゃに?」
「・・・いや。Your song is beautiful. と言えば十分じゃないか?」
「オッケー!ありがとー!」

そのくらいは英語で言えろよ見た所中学生だろ、と乾は喉まで出かかったが、言わないであげる事にした。

「・・・・って、あーーー!!」
「今度はどうしたんだ?」
「ドリル!ドリル忘れてた、ドリル!もーすぐお昼だよ!やってないよ!終わらないよーーー!」

ホテルへ。急いでホテルへ帰らなくては。
このままでは本当に、一度も海へ行けないみたいな悲しい事態になってしまう。

「じゃーね乾っち!紀伊梨ちゃんちょっと急ぐから、これでーーー」
「待った。」
「んお?」
「これも何かの縁だ。良ければ、宿題を見よう。」
「え、良いの!?乾っち忙しいんじゃないの?」
「良いんだ。正直、時間がどうのと言うよりも、一人で退屈していてね。旅行じゃなく、父親の仕事の都合で来ているものだから両親が2人ともバタバタしているんだ。」

確かに一人の方が集中は出来る。
それは確かだ。
でも、リゾートまで来ていて日中ずっと一人というのも、流石につまらないと乾は思っていた所だった。

紀伊梨が笑顔でYesの返事をしたのは言うまでもない。