その後宿題を終え、昼食を終えて晴れてビーチに行く権利を得た紀伊梨は、その後ずっとビーチでの海遊びを兄弟と楽しんだ。
疲れたらちょっと休憩して、また海に入って遊んで。
ちょっとお腹すいてきたなあ、なんて思ったら、もう夕方である。
道理で眩しい筈だ。
何て綺麗なサンセット。
「わあ、凄い!凄いね、蓮!」
「うん!」
「綺麗・・・やっぱり何度見ても良いなあ、セーシェルのサンセット♪お父さん毎年ありがと♡」
「・・・うん。」
「・・・・・」
紀伊梨は無言で夕日の海を見つめた。
セーシェルには毎年来ているのに、同じように夕日を見ても毎年感じる事は違う。
今年はフェスタの事を思い出した。
『恋をした事がないだろ?』
それを理由に、アイドルにはなれないと言われたあの日。
あの時は、兎に角なれないと言われたという絶望感で頭がぱんぱんだったけど。
でも今は少し受け入れ始めている・・・というか、開き直り始めている。
だって。
どんなになれないと言われたって、無理と言われたって何と言われたって。
この歌いたいという衝動には勝てない。
「・・・・I’m gonna reach for the stars!
Although they look pretty far!」
どこまでも高く広がる空。
果てなく広がる海。
夕焼けのスポットライト。
何て良い気分なんだろう。
これを捨てるなんてとんでもない。そんな事出来ない。
例えアイドルになれなくても、きっと自分はずっとこうやって生きていくのだ。
そうして高らかに歌う紀伊梨の歌声に、足を止めて勢いよく振り返った者が居た。
リラだ。
「・・・・・!」
「Just take my hand we’re gonna Reach for the stars ーーー」
「Wait!」
「ほえ?あ、リラちーーーえ?」
「(待って、何?貴方は日本のアイドルなの?今朝)ーーーーーahh・・・・」
リラははあ、と溜息を吐いた。
「(もう良いよ。貴女が何であろうと、私を助けられるわけじゃないし。)」
「え、ちょっとー!」
「Bye.」
「バイバイくらいは紀伊梨ちゃんでも分かりますー!ねー、ちょっと・・・ねー!」
そのまま踵を返して、リラは行ってしまった。
紀伊梨は追いかけようにも、さっきまで遊んでいて裸足だった。
このまま歩道に出るのはきつい。
「・・・・もーーー!」
「だあれ、あの子?」
「紀伊梨姉ちゃん、また人に大きなお世話焼いてんのかよー。」
「違うもん!・・・多分!」
蓮が事の次第を知ったら、どこが違うんだと言われるであろう。
「・・・・・」
リラはまたはあ、と息を吐いた。
さっきのは。
流石に、ちょっと。
「(少々、一方的じゃないか?)」
「!」
リラが顔を上げると、そこには乾が居た。
とは言っても、リラは初めて乾を此処で認識したが。
「(・・・誰?さっきの女の子の友達?)」
「(まあ、そんなところだ。同時に、君の隣室の客でもある。)」
「(ああ・・・・)」
リラはそれで全てを察した。
「(・・・煩くしてる自覚はある。それは謝るよ、ごめんね。)」
「(それは構わないが、良ければ何を悩んでいるのか聞かせてくれないか。)」
「(・・・聞いてどうするの?)」
「(どうもしない。正直に言うと俺はただ興味があるだけだが・・・どうやら、俺の友達は君が気にかかるようだからね。)」
リラは目線を彷徨わせた。