Family moments 3:Fate 1 - 1/5


実家という物は大抵の場合地方にあるものである。
実家に限らず自宅でもそうだが、都市は何かと土地代がかかるので、学校や仕事場は都市、家はベッドタウンや地方、という人は多い。

ただ、黒崎家は実はこの例に入らないのだ。
千百合達は湘南に住んでいるが、実は父、雄一も母、純子も、実家は東京。
つまり、夏に祖父母に会いに行くと言うのは、黒崎家にとっては上京を意味する。

東京は浅草の中にあり、さりとて別に金持ちなわけでもなく。
ただ昔からそこに建っているというただそれだけの理由で浅草に住み続けている、若干古く敷地のでかい家。
そこが、黒崎雄一の実家だった。

「母さん!帰ったぞ!」
「あらあら、いらっしゃい。待ってたのよ、さあお上がりなさいな。」
「雄一、元気そうだな。純子ちゃんも、顔色が良さそうでなによりだ。」
「へへ、どうも。」
「やっほ、じいちゃんw」
「ちわ。」
「おお、棗も・・・お前、背が伸びたな?」
「まあ、一応男子ですしwおすしw」
「千百合ちゃんも、すっかり女の子らしくなって!・・・そういえば、今回は幸村君は居ないの?元気にしてる?」
「うん。」
「こないだも大会で優勝したよw」
「そうかそうか!そりゃあ良かったなあ。」

小学生の頃からずっと友達づきあいをしているので、幸村も・・・というか、紫希や紀伊梨も、今までに2、3度この家に遊びに来たことがある。

千百合は死ぬほど嫌だったが、大人のネットワークに手を出せるわけもなく、祖父母は普通に親経由で千百合と幸村がお付き合いしている事を知っている。

「今誰が居るんだ?」
「まだ米助しか居ないわよ。」
「げ。」
「お前は米のにーちゃん嫌いだなあw俺は好きだけどw」
「嫌いじゃないけど面倒くさい。ノリが。」

黒崎米助は、父雄一の兄である。

しかしこの男、企業の社長とかやっているくせして、どうもだらしなくてきっちりしていない。
いつもふざけていてゲスい話と笑い話が大好きで、そのせいか年収も年齢もそこそこ以上なのに未だに妻どころか彼女も出来ない始末。女性に興味がないわけじゃなく、結婚願望バリバリで現状これ。

そのせいか、周囲の彼女とか彼氏とかの話に異様に敏感なのだ。

「起きてるのか?」
「いーえ?静かだし、これは寝てるわよ多分。」
「あー。じゃー私、今のうちにどっか遊び行く。」
「そんな会いたくないのw」
「極力関わる時間短くしたい。他の親戚居ないなら猶更。」

どうせ夕食時には嫌でも顔を合わせるのだ。
煩くならない内にと思った千百合は、荷物を玄関先に下ろすだけ下ろし、ポシェットだけ持って直ぐに家を出た。