そろそろ帰るかな、なんて思いながらモールを更にぶらついていた時だった。
モール内とモール外にまたがる様にして位置しているテナント。
フラワーショップである。
「・・・へえ。」
結構大きい。
そしてインテリアとの兼ね合い重視らしく、花束向きの花なんかは結構少ない。
とかいう分析が出来る様になったのも、やっぱり恋人が花好きだからこそであろうか。
少なくとも、千百合が一人で花に興味を持つようになる事などほぼないだろう。
「いらっしゃいませー。」
店に足を踏み入れると、まあ実に色んな観葉植物が。
こういうのはガーデニングとは微妙にジャンルが違うので、比較的世話も楽である。
これなら自分でも出来るかな、と思う気持ちもあるが、それはそれとしてそんなにまめな性格していないので、それでも枯らしてしまうかもという気持ちもある。
「・・・お。」
よくよく見てみると、どうやらこの店は親切にも、植物紹介カードの所に育てやすさの目安が書いてある。
初心者向き程星が多いらしい。
(へえ、これ難しいんだ。簡単そうなのに。逆にこっちは星5つになってるけど、ひ弱そうなんだけど大丈夫かな。犬猫飼いの人にNGの植物・・・そういうのもあんのか。)
相変わらず奥が深いというか、考える事多いよなあ、なんて思いながら更に奥に行くと、ポップアップでコーナーが示されていた。
「・・・サボテン。」
なるほど。
確かに比較的簡単と聞いた事がある。
花がなかなか咲かなくてじれったいと思う人も居るらしいが、千百合自身は花が咲くか咲かないかは別に左程気にしないし。
ただ、折角詳しい彼氏が居るんだから、一つくらいはあっても良いかなとかねてから思ってはいた。
サボテンちょっと見てみるか、と棚の裏ですと示されているサボテンコーナーを覗いた。
「あ。」
「ん?」
先客が居た。
うわ。
面倒くさい。
反射的にそう思った千百合は、相手がリアクションしてくる前に、足早にモールの外に出た。
(そうだった、ここ東京だった。)
いやしかし、それにしてもここまでピンポイントな偶然あるだろうか。
東京が生活圏内の知り合いなんて、そこまで人数居るわけじゃないのに。
しかも、友達なら兎も角、友達と言うにはあまりに。
顔見知り未満じゃないか、あの男。
(名前なんだっけ、名前・・・えー、あ。)
不二周助だ。
そうだ、梓がそう言っていた。