Family moments 3:Fate 2 - 1/6


結局幸村に意見を聞けず仕舞いのまま、千百合は次の日再び昨日のモールへと足を運んでいた。

勿論あの占い師に占って貰おうとしている叔父の付き添いだが、その叔父は今は居ない。
今日は仕事なので、午前と昼食後のミーティングを終えたら来るらしい。
ショッピングモールの占い師ってそこまで言うほど会いたいものかなあ・・・と思わんでもないが、もしかしたらあの叔父は叔父なりに姪っ子と遊びたいのかもしれなかった。

まあ兎に角、今は叔父は居ない。
千百合は一人。

だもんで、昨日行けなかったサボテンコーナーに千百合は舞い戻ってきたのだった。

「えーと、サボテンサボテン・・・」

結構色々ある。
でも思った通りに小さいし、それほどスペースも取らなさそう。

どうしようか、本当に買ってしまおうかな、なんて考えていると、遠くでいらっしゃいませーと店員の声。
別に自分には関係ないし、なんて思いながら千百合は引き続きサボテンを見ていたのだが。

「あ。」
「え?」
「やあ、また会ったね。」

笑って手を軽く振る不二周助が其処に居た。



「良かった、君が今日も此処に居て。」
「どういう意味よ。」
「サボテンに興味があったんだよね?でも、昨日はあからさまに避けられちゃったから。一人でゆっくり見たかったのに、邪魔をしちゃったかなって、気になってたんだ。」

不二周助は、極めて人当たりが良い人間だった。

爽やか、というのはこういう事を言うのだろうか。
幸村に似ているけれど微妙に違う、凄みの代わりにミステリアスさを足したような、そんな感じがした。

「別に、邪魔って程じゃないけど。話しかけてきそうなオーラあったから、それが怠かっただけで。」
「それなら、今もお暇した方が良いかな?」
「今はまあ、時間あるしそこまで疲れてないし。」
「そう。そう言ってくれるなら、お言葉に甘えて。なるべく、静かにしてるから。」

言いながら微笑むその顔は、やっぱり幸村と似ているようで何かが決定的に違う。いや、別人だから当然だけど。

「・・・・・・・」
「・・・何?」
「・・・ううん、何でも。サボテンが好きなのかなと思って。連日足を運んでるくらいだから。」
「私よりそっちじゃないの。」

連日まともにサボテンを物色してるという意味では、千百合より断然不二の方がサボテン好きということになるだろう。

その推測はどうやら当たりだったらしく、不二はふふ、と楽しそうに笑った。

「そうだね、僕はサボテンが好きだよ。家でも育てているし。」
「へー。」

意外。と言いかけたが、千百合は止めた。
結構意外でもないかもしれない。この柔和そのものの笑顔と、とげとげしたサボテンのコントラスト。

「詳しいの?」
「そうだね。花全体となるとそんなに詳しくないけれど、サボテンに限った話をすると、まあまあ詳しいんじゃないかな。」
「ふーん。じゃあさ、初心者におすすめの・・・・あ。」
「え?」
「ごめん、やっぱなし。」
「どうして?初心者にも育てられるようなお勧めの種類は、って聞きかけたんじゃないかい?僕でも、そのくらいは答えてあげられるけど。」
「いやちょっと。サボテンの実力じゃなくて、個人的な事情で聞くのは止めるわ。ごめん、言いかけておいて。」

知らない男子と一緒にサボテン見てそれを買ったとなると、幸村は面白くないかもしれない。というか、自分なら面白くない。例え自分の趣味に近づこうとした結果であっても。
花屋の店員とかならいざ知らず、完全に成り行きで連日出会ったほぼ知らない男子に。

「そう?まあ、君がそう言うなら・・・あ。」
「?」
「いや、そう言えばまだ君の名前を知らないなと思ってね・・・・梓、さんも教えてくれなかったし。」
「ああ、そうなんだ。私は梓から聞いたわ。不二周助でしょ。」
「ふふ。そうだよ、よろしくね。」
「どうも。私黒崎千百合・・・・で?」
「ん?」
「あんた、梓とどんな関係なの?」
「・・・どういう意味かな?」
「普通はクラスメイトの女子に向かって、梓さんなんて言わないでしょ。」

普通は苗字。桃崎さん、であろう。
次に、親友だったり幼馴染だったり恋人同士だったりすると、梓になる。育ちが良さそうな所を鑑みても、せいぜい梓ちゃん、である。名前+さんというのは、相当妙。

「親戚か何か?」
「・・・・いや、クラスメイトだよ。梓さん、って呼ぶのは・・・まあ、個人的な好みというか。苗字で呼ぶより、しっくりくるんだ。誰に対してもそうなわけじゃないけどね。」
「へー。変わってん・・・」

「千百合~~~~!」

来た。煩い煩い叔父が。

「連れが来たから、じゃあ。」
「うん。じゃあね。」

手を振って、不二はまた微笑む。
あの笑顔、どこかで見た気もするなあと千百合は思った。