「くっは~~~!楽しみだなー、美人占い師!」
「だから多分彼氏持ちだってば。」
「わからないだろ!あんまり美人だとだなあ、逆に高嶺の花扱いされて誰も寄ってこないっていう可能性がーーー」
「よしんばそうでも、叔父さんみたいな中年相手にしないよ。大学生くらいだったし。ああ、見えた見えた。」
占いブースは、昨日と全く同じ状態だった。
という事は、あの美人占い師も昨日と同じ場所にーーーと千百合が目を走らせると、やはり彼女は居た。
そこに。
そして千百合と目が合うと、にっこり微笑む。
(・・・あれ、既視感が何か。)
「・・・まあ良いや。見りゃあ分かるでしょ、ほら行ってきなよ。」
「・・・・・・・」
「叔父さん?」
「・・・あ、あの、」
「?」
「その・・・やっぱり今度に、ぎゃうっ!?」
「良いからとっとと行けや。」
叔父の背中を遠慮なく蹴飛ばす千百合。
そうだった、この叔父は美人とみると急にヘタれるのだった。
「ま、待って待って!時間頂戴、心の準備が!」
「そんなもんは此処に着く前にして来い。」
折角並んでないから今がチャンスなのに。
中1女子にしては割りかし強めな力で叔父を引っ張り、半ば無理矢理椅子に座らせると、美人占い師は特段気にした風もなくあら、と小さく言っただけだった。
「こっ・・・・こ、こんにち、こんにちは・・・」
「こんにちは。男性のお客様は珍しいので、嬉しいです。今日は、何に致しましょう?」
「へっ?な、何に・・・」
「占う中身だっての。ほら。」
「あ、ああ、占いね!占い、うん・・・じゃ、じゃあ・・・」
「はい。」
「・・・その、お、俺と貴女の相性のようなものを・・・」
「まあ、お上手ですね。ですけど残念、私恋人がいる物で。」
「えっ、」
「え、じゃねえよ。何さも意外みたいに言ってんの。」
まさか本気で高嶺の花説あると思ってたのだろうか。馬鹿じゃなかろうか。仮にもし居なかったとしても、口説かれ避けの為にこう言うに決まってる。美人女子大生が40超えた中年なんて、普通は相手にしない。
「あの。このおっさん婚活上手くいってないんで、何かその辺の事を。悪い結果でも、遠慮なく言ってもらって良いんで。」
「おい、勝手な事言うなよ!ああ待って、言わないで下さい千百合様帰らないでえええ!あの、あの、俺婚活で失敗続きなんでその、どーいうタイプの女の子と相性が良いか的な事を一つ二つ三つ程・・・」
「ふふ、分かりました。では、可能であればお名前と生年月日を此処に。プライバシーの観点で話せないというのでも構いませんが、そうなると結果の精度はやや下がる事をご了承下さい。」
「あ、は、はい!ええと、黒崎・・・米助・・・」
今どきは占いもプライバシーだなんだ大変だなあ、なんて思いながら叔父を眺めていると、なんとなく皆こっちを見てる事に千百合は気づいた。
まあ結構騒いでいるので、無理もない。
「はい。」
「はい、では占わせて頂きますね。このタロットの上に手をかざして、聞きたいことを念じて下さい。そう・・・後は私が。」
スタ、スタ、とタロットを並べ始める占い師。
本当に当たるんだろうか。何か図らずも、叔父で試してみてるみたいな風になってるが。
「・・・出ました。先ず、此処にあるカードは・・・」
「あ、あのー・・・占って貰っといてなんだけど、一個一個言われると俺忘れちゃうから!やー、ごめんごめん!だからさ、そっちで纏めて言ってもらえると・・・駄目?」
「ふふっ。構いませんよ。先ず、貴方の性格ですが、タロットの上では非常に愛情に溢れる方・・・今回婚活に関してのお話なので、言うなれば、誰とでも合わせられる。コミュニケーション能力が非常に高い方のようですね。」
「外してますよ。」
「煩いよお前はもお!で?で?続きは?」
「うふふっ!では次に、今の貴方が他の人から見てどのような状態に見えるか、ですがこれが非常に難しいですね。貴方はなんというか・・・婚活をしてはいても、心の底では結婚はしなくて良い、ともお思いになっているのでは?新しい出会いが上手くいかないのは、そういった内心のお気持ちが、なんとなく感じられるからかもしれません。」
「やっぱり外してな・・・叔父さん?」
米助は急に黙り始めた。
え、嘘だろ。もしかして当たっているのか。
「次に、近い未来についてですが・・・遠くを見る必要はなし、と出ています。案外、運命の出会いはもうすでに、すぐ近くにあるのかもしれません。あまり、新しい出会いに拘りませんよう。」
「・・・叔父さん、嬉しくないの。」
「いやまあ・・・嬉しいけど、うん・・・」
「最後に本題の、相性のいい女性のタイプですが・・・このカードは、全てを表しています。」
「つまり?」
「特に相性などに拘る必要はなく、重要なのは素直である事と、運とご縁を信じる気持ちである・・・と、そういう結果になりますね。」
「・・・・そっか。どうも。」
どうしたんだろうか、この叔父は。いつも騒がしいのに、急に火が消えたようになって。
(落ち込んでるわけじゃなさそうだけど。)
悲しいみたいな顔してるわけじゃないが。
でも、やたらにしおらしいのは確かだ。
「・・・そうだ!千百合も占って貰ったらどうよ?」
「え?」
「ほらほら、金は俺が持つからさあ!何でも良いじゃん、何でも占えるんっしょ?」
「ええ、大抵の事は。」
「ほらほら!」
「ほらって。」
普段だったら良いわ別にそんなもん、と辞退する所だったが。
千百合の中では、昨日幸村と電話で話したことが割と尾を引いていた。
確かに、生涯に一回くらいは経験してみても良いかもしれない。今回は無料だし。
そして更に、此処で駄目押し。
「僕からも、お勧めするよ。」
(あ。)
「不二・・・」
「あら周助、今日も来たの?」
千百合は振り向いた。
周助って。
えらく親しそうだが、友達。いや。
「・・・彼氏、じゃないよね?」
「なわけあるか、彼奴私と同い年。中1。」
「うふふっ!うちの弟なんです。」
「驚いたよ。まさか、黒崎さんが姉さんの占いに並んでるなんて。」
「こっちの方がびっくりだわ。」
そうか。何かやたらに既視感と思っていたら、この2人。顔つきは左程似ていないが、微笑み方がそっくりなのだ。
「話を戻すけれど、手前みそだけれど姉さんの占いは結構高確率で当たるから。損はしないと思うよ。」
「いやあね、周助のお友達からお金なんて取らないわよ。さあどうぞ、座って。」
「・・・・・・・・・じゃあ。」