Family moments 3:Fate 2 - 6/6


「よって、x=2/3、y=1/3・・・よし。ふう。」

幸村は自室で伸びをした。

全国大会直後の今のタイミングは、皆休みである。
こんなにゆったり勉強できるなんて久しぶりだ。

「・・・・・・・」

ちらりと時計を見やると、21時。
そろそろ電話したいが、今日は大丈夫だろうか。何せ、昨日は20時に電話したら風呂だったので。

(一応、20時以降だったらいつでもとは言われてるけど・・・)

若干やりにくさを感じつつも電話をかけると、千百合はすぐ出てくれた。

『もしもし?』
「ああ、もしもし?今大丈夫かい?」
『ああまあ、大丈夫は大丈夫だけど。うん。普段だったら誰かの中断入るけど・・・』

衣擦れの音がする。姿勢を変えたのだろうか。
もう夕食も入浴も終わっているだろうし、パジャマで寝転がったりしているんだろうか。そういえば、最近千百合の寝転ぶ姿なんて全然見ていない。

『多分今日は、親戚中叔父さんの話で持ちきりだと思うし。』
「叔父さんって、昨日の叔父さんかい?あ、じゃあ占いが上手くいったのかな?」
『ああうん、まあそんなとこ。占いが・・・うん。』
「?」
『まあ、半分精市のおかげみたいな所あるけど。』
「え、俺が?どうして?」
『んー・・・まあかいつまんで言うと、精市と占いのおかげで、叔父さんが結婚に腹を括った的な事でさ。』
「・・・・?腹を括る?婚活していたのにかい?何か、表現が変なような・・・」
『何か、内心結婚に二の足踏んでたっぽいよ。』
「え?」
『精市を見てそう思ったんだって。』
「え。」

嘘。どうしてそんな。
と思ったのが伝わったのか、電話の向こうで千百合が笑った気配がした。

『いや、別に悪いことしたわけじゃないから大丈夫。ほら、結構前だけど精市とか皆でうちに来た事あったじゃん。』
「ああ。もう2年位前かな。」
『あの時に、何か叔父さんは精市に感銘を受けたらしくて。男としてあれくらいは出来ないと、結婚して責任取るなんて言えないかなとか思ってたらしいよ。』

そう言われると、幸村としては苦笑しか出来ない。

「喜んで良いのかどうか・・・俺は別に、人にプレッシャーを与えるために千百合を大切にしてるわけじゃないんだけど。」
『分かってる分かってる。完全に叔父さん側の問題だから。問題って言うか、親戚中歓迎ムードだしね。あのちゃらんぽらんが、そこまで考えてたなんてーって。』
「そう?そう言ってくれると、有難いけどね。でも、じゃあ叔父さんは今は?結局、結婚は見直すのかい?」
『ああいや、好きな人居るみたいだから。真面目にアプローチしてみようかなって事で、今親戚全員で作戦会議中。』
「あははっ!大がかりだね、大変だ。」
『まあ絶対ミスりたくないとかって気合入れてるし。』
「・・・気の毒だけど、それはどうかな。」
『え?』
「出来ないんじゃないかなと思うよ。少なくとも俺は。」
『マジか。しくじりそう?』
「叔父さんだからっていうわけじゃないよ。そうじゃなくて・・・何ていうのかな、好きな人が相手だから、良い所を見せたいっていう気持ちは、すごくよくわかるんだ。」
『・・・・・そう。』
「そう。でも好きな人相手だからこそ、普通ならしないような失敗だって、絶対どこかでしてしまうんだよ。」
『・・・そう・・・そう?特例は居るんじゃないの。』
「ふふっ。居ないよ。少なくとも、俺は今まで見た事がないな。」
『そう・・・・』

段々千百合が言葉少なになっていくのは、我が身の事を顧みて恥ずかしくなっているからであろう。
こういう所が可愛いと幸村は思う。
もう付き合って何年も経つのに、未だに千百合はこの手の話が軽快に出来ない。

「上手くいくと良いね。叔父さんの婚活。」
『上手く・・・まあ、上手くいかなくて落ち込まれるより良いかな。占いでも、運命の人は近くですとか言ってたし。』
「そうだ。そういえば、千百合は・・・・」
『ん?』
「・・・・いやごめん、ちょっと勘違いだったみたいだ。何でもないよ。」
『そう?』

この時。
もし千百合が占い師にかかっていたとして、いかに彼氏と言えど、何の占いを頼んでどういう結果だったか、と不用意に聞くのは憚られた。
そのあたりが、幸村の育ちの良い所である。人の運命を横からじろじろ見るなんて、と退席しようとした不二もまた似たようなものだ。

この判断は、それと知らずおおいに千百合を助けた。
その事に2人とも気づいていない。