ふと気づくと、学校の下足箱に立っていた。
でも、今学校に着いた所なのか。
それとも学校から帰る所なのか分からなかった。
そんな中で、頭を占める事が一つ。
ああ、そうだ。部活。
部活、行かないと。
でも行きたくないなあ。
行くと嫌な目に遭うかもしれない。
でも行かなくちゃ。
せめてこれくらいやらなくちゃ。
こんな事も出来ない子だなんて思われたくない。
ああ、足が。
足が動かないよ。
「・・・・!」
可憐はびく!と体を揺らして目を覚ました。
可憐は走行する車の中に居た。
近い布張りの天井。
視界の端に、横切っていく緑。
隣からは妹の美梨が立てる寝息が聞こえる。
斜め向かいの助手席に座る母親も寝ているようだった。
父は可憐がまだ眠り続けていると思っていて、全然気がついていない。
可憐は長く息を吐いて、シートに再び体重を預けた。
今、桐生家は一家揃って母の実家に向かっている所であった。
千葉なので関東からは出ないけど、千葉は千葉でも大分端っこの方なので、行くには普通に結構時間がかかる。そんな距離であった。
(嫌な夢見ちゃったな・・・・)
車内はクーラーが効いて涼しいのに、うっすら汗ばんでいるのを感じる。
そもそも可憐は休暇中だろうがそうでなかろうが、部活に時間を割かれることがとてもとても多いので、今回みたいに田舎に旅行というのはそこから強制的に離れる良い機会なのである。
はっきり言って、今の可憐は、部活に居るのが楽しい状態とはお世辞にも言えない。
勿論大本の原因は部活そのものではないので辞めたりはしないし、一時期に比べれば随分マシにはなったものの、それでも依然として負の感情が多めに出てしまう状況は続いている。
田舎に遊びに行く時くらい、忘れていたいのに。
(・・・いつになったら、気にならなくなるんだろう。)
時間が解決してくれるのを、可憐は待っている。
他にやり過ごす術を知らないから。