Family moments 4:One side 1 - 4/5


その頃、忍足は自宅でオンラインゲームをしていた。
読書は隙間時間に出来るが、こういった遊びは纏まった時間が取れないと難しい。偶にやる分にはとても面白いし。

とはいえ、今日は結構座っている時間が多くてちょっと疲れた。
伸びをして、椅子から立って、コーヒーでも入れようかなと階下に降りたところで、携帯が鳴った。

「?」

可憐からだった。
今日は休みの筈だ。
という事は、何かトラブルの可能性が高い。

一番にトラブルの可能性を考えられてしまうあたりが情けないと言えば情けないが、まあ実際その通りだろと言われれば。まあ、うん。

「もしもし?」
『もしもし、お休み中ごめんね助けて下さい・・・!』

声がもう泣いている。
僅かに焦燥する忍足だが、自分が焦った様子になると可憐は余計パニックになるのは目に見えているので、平静平静。

「どないしたん。」
『あの・・・話すと長くなっちゃうんだけど、今お母さんの実家に来てて・・・』
「うん。」
『それでその・・・事故で、お祖母ちゃんのラブレターを見ちゃって・・・』
「・・・・ん?」
『お祖父ちゃん当てじゃない奴を、ずっと取ってあるみたいなの・・・見なかった事にしようかとも思ったんだけど、元々どこにあったのかわからないから戻せなくってっ!』
「・・・・ちょっと待ってんか。」

何がどうしてそうなった、と聞きかけたが、もうこの際何故の部分はどうでも良い。
目下、可憐が困っていることが重要なのだ。

「先ず、一個一個いこな。」
『うん・・・』
「お祖母さんから、誰か知らん男の人当てのラブレターやねんな?」
『うん・・・』
「それは確かなん?ほんまはお祖父さん当てやったり、お祖父さんからやったり、友達当てやったりせえへん?」
『お祖父ちゃん当てじゃないの・・・それは絶対そうだと思う。気さくで笑顔が素敵な貴方、って書いてあったけど、うちのお祖父ちゃん真逆のタイプだから・・・』
「そこまでなん?」
『私の周りで、あそこまで不愛想な人いないもん・・・』
「ふうん・・・・」
『お祖父ちゃんからっていうのもないかなあっ。理恵より、って書いてあったしっ。あ、理恵って言うのがうちのお祖母ちゃんの名前なんだけどっ。』
「そうなん。やったら確かに違いそうやな。」
『友達当て、っていうのは確かに、絶対違うって言う証拠はないけど・・・貴方が好きです、って書いてあったから、それも難しいんじゃないかなあ・・・』
「まあ、違うて思うといた方がええやろなあ。」
『やっぱりそうだよねっ!どうしよう私、もうお祖母ちゃんにしろお祖父ちゃんにしろ何も言えないし、聞けないし・・・!』

まあそうだろう。
幾ら孫とはいえ、そこは夫婦のプライベートな部分であって、可憐がずけずけ踏み込んでいい部分じゃない。

いや。待て、しかしそういう意味では。

「・・・俺はこの話聞いとってええんやろか。」
『えっ?あ、ああっ!ご、ごめんね身内の話をしちゃってっ!でも・・・忍足君以外、相談できる人居そうになくて・・・何か、真美とか朝香とか、向日君とか宍戸君とかは、こう・・・面倒くさがられちゃいそうな気がして・・・』
「まあなあ。」
『瑠璃とか茉奈花ちゃんとか跡部君は、こう・・・聞いてはくれそうだけど、別に放っておいたら良いじゃん、こじれたりして離婚したらそれはそれじゃん、みたいに言われそうな気がして・・・・』
「否定しづらいわ。」
『だから、忍足君に聞いて貰えないかなあって・・・ご、ごめんね身内の話なのにっ!』
「いやまあ、それは別にええねんけど。」

ただそれはそれとして、成り行きは分かったがしてやれる事は少ない。

「家族で田舎なんやろ?」
『うんっ。』
「娘さん・・・この場合、お母さんに聞いてみるていうのんはどないやろか。」
『・・・それはちょっと、私も考えたんだけど・・・』
「けど?」
『お母さんドジだから、変な形でバレちゃったらどうしようって思って・・・!』
「それもそうかもしれへんけど。」

しかし、ここまでどうにもならないと割と八方塞がりでは?と思う。
可憐も、今忍足に相談したことで、思っていたより解決方法がない事に自分で気づきつつあった。

『・・・・ごめんね、やっぱり自分でもうちょっと考えてみる・・・』
「せやなあ・・・・なあ、可憐ちゃん。」
『なあに?』
「参考までに聞きたいねんけど、可憐ちゃんのお祖父さんとお祖母さんって、仲悪いん?」
『えっ?』
「多分やねんけど、いずれはどっちかには言わなあかんと思うねん。」
『うん・・・』
「でも、それがきっかけでこじれるとか離婚やとか、そんな事になるやろか?」
『えっ?』
「会ってみたこともあらへんのに知った風な口聞いてまうけど、別に伊達や酔狂でずっと一緒に連れ添ってるわけでもあらへんやろし。敢えて言うけど、はがき一枚でどうこうなる事でもないと思うねん。」

それこそ、そんな事もあったわねえ、すっかり忘れてたわ、で済むような話に聞こえるのだ。忍足には。

ただ、可憐には。

『・・・・わかんない。』
「え。」
『私、お祖父ちゃんの考えてる事わかんないから・・・本当にお祖母ちゃんの事好きなのかどうか、とか・・・・お見合い結婚だって聞いたことがあるし、ひょっとしたら、お祖母ちゃんじゃなくても良いのかもしれない・・・・』
「・・・・・・」
『それでも、お祖母ちゃんの事は分かる事が沢山あるから・・・お祖母ちゃんはお祖父ちゃんの事が好きなんだよね、ってずっと思ってたの。だけど・・・』

今、そこからして揺らぎ始めてしまったのだ。
これを突いて、崩れない自信があるかと言われると、正直可憐にはあまりない。

「・・・・・・」
『・・・でも、忍足君の言う通りだよねっ。いつまでもずっと黙ってるわけにも、はがきを隠してるわけにもいかないし・・・いずれはバレちゃうし・・・』
「・・・ほんなら、もうちょっとだけ時間取ろか?」
『えっ?』
「お祖父さんの考えてる事、もうちょっとだけ調べたらどないやろ。」
『え・・・・えええっ!?』
「それで話せそうやて思うたら、それでええねんし。危なそうやなて思うたら、その時はもうお母さんに任せたらええと思うわ。娘やねんから。」
『・・・・・』
「どないやろ?」

それは確かに、かなり現実的かつ出来そうなプランに思えた。

『・・・・うんっ!有難う、それで行ってみるっ!』