Family moments 4:One side 1 - 5/5


可憐が忍足に相談をしたのは、もう夕食の直前の事であった。

そこから直ぐに夕食になり、入浴になり、寝るのが早い祖父母に合わせて異様に早く寝る体制になってしまった可憐は、暗い部屋で布団に横になりながら起きていた。

隣には美梨が横になっていて、スマホを暗がりで見ている。

「・・・・ねえ美梨?」
「んー?」
「美梨はさ・・・」
「んー?」
「・・・気さくで笑顔が素敵な男の人、ってどんなだと思う?」
「んー?・・・・ん?え、なんて?」
「気さくで笑顔が素敵な男の人、ってどんなだと思う?」
「え?コイバナ?」
「ううん・・・まあ、そんなようなもの?かなっ?私の恋じゃないけどっ。」

姉は直ぐに顔や態度に出る。
美梨は、この様子だと自分の話じゃないというのは本当っぽいなと感じた。

「どんな?ってどんな?例えば芸能人の誰それさんみたいな、っていう風に例を出して欲しいって事?」
「うん、まあ・・・私、どういう人がそれに当てはまるのかぴんと来なくってっ。」
「気さくで笑顔が素敵かぁー・・・気さくで・・・笑顔が・・・・」

ううん、と美梨は視線を彷徨わせた。

「・・・割と、お父さんみたいなタイプじゃない?って美梨的には思うかな。」
「えっ?」
「だってほら、お父さんって営業マンでしょ?笑顔がにこにこしてて明るいし、話しかけやすいし。美梨、お父さんってどういうタイプ?って聞かれたら、別に気さくで笑顔が良い感じのタイプ、って言っても嘘にならないと思うよ?」
「た、確かにっ・・・・」

それは確かにそう。
余りにも身近過ぎて気が付かなかった。

(・・・えっ?でも待って、って言う事は、あのはがきの宛名・・・)

まさか。父の健二である可能性が。

「・・・な、ないっ!流石にないないないっ!ないよっ!ドラマでもそんなのないよっ!」
「うわ、びっくりした!何っ!?」
「あ、ご、ごめんね、ちょっと・・・」

可憐は頭をぶんぶん振った。ない。流石にそれはない。娘の夫に横恋慕だなんて、そんな鬱屈した感情をあの明るい祖母が抱えてるなんて思えない。

「何、さっきからお姉ちゃん・・・」
「あ、ご、ごめんねっ!ちょっと・・・あ、そ、そうだっ!あの、お母さんとお祖母ちゃんって似てるけど、男の人の趣味は違うよねっ!そう考えるとっ!」
「?まあ、そうかもね。でも、お祖母ちゃんはどうかなあ?」
「えっ?」
「だって、お祖母ちゃんとお祖父ちゃんってお見合いでしょ?お祖父ちゃんがお祖母ちゃんのタイプかどうかは、わかんないって思うな。」
「で、でもっ!結婚してるわけだし・・・」
「だからー、タイプじゃないから結婚しません、が通らなかった時代でしょって話だってば。お祖母ちゃんって前向きな方だけど、前向きって言い換えたら現実が希望通りに行かなくても乗り越えちゃうって事だからね。お祖父ちゃんが希望と違った可能性は、全然あると思うよ?」

美梨の言う事は、非常に正論である。
実に冷静に物事を見ていると言っても良い。

そしてその冷静さが今は辛い。

「・・・ねえ美梨。」
「なーにー。」
「・・・お祖父ちゃんって、お祖母ちゃんの事好きかな?」
「嫌いじゃないんじゃない?」
「えっ?そう思うっ?」
「だって、お祖父ちゃんって嫌いなものに対してすっごい冷たくない?ずっと前、グラビアのお姉さんたちが出てるエッチ系のバラエティがテレビに映った時、びっくりする位軽蔑しきった目してたの見た事あるし。お祖母ちゃんが嫌いだったら、もっと色々態度に出てるんじゃないかな。」
「な、なるほど・・・・」
「ただ、好きかって言われると美梨的にはそれもうーん?って感じかな。」
「そ、そうなのっ!?」
「んー、何かお祖父ちゃんってさあ。こう・・・世の中で「どうでも良い」のゾーンに入る範囲がすっごい大きい人だなーって美梨的には思ってたんだよね。」
「どうでも良い・・・」
「人って皆、好きと嫌いとどうでも良いの3つに物事を分けて考えてると思うけど、お祖父ちゃんって身の回りの事のすっごい沢山のものをどうでも良いに分けてる感じするんだよね。興味ありませーん、勝手にやってて下さーい、みたいな?」
「な、なるほど・・・」
「その分嫌いなものはすっっっっごい嫌いだし、好きな物はすっごい好きって感じするけど。お祖母ちゃんって、好きの中に入ってるかなー?どうでも良いんじゃないかなー?って思うなー。」
「ど、どうでも良い・・・・自分の奥さんなのに・・・!」
「まあお見合いだからねー。流石に嫌いな人は奥さんには出来ないかなって思うけど、まあまあ及第点だったから妥協したっていうのは、あり得るんじゃない?」

さっき、美梨が嫌いではないと思うと言った時に浮上した気持ちが、また急速にしぼんだ。

そんな。
どうでも良いなんて。

そんなの祖母が可哀想ーーーいや。
祖母も、祖父に向かっては妥協してるかもしれないのか。

「・・・・・・・」
「あふ・・・・・眠くなってきちゃった。美梨もう寝るね?続きがあるんならまた明日って感じで、よろしく~・・・」
「ちょ、ちょっと待って美梨っ!最後に一個っ!」
「え~?何~?」
「あの・・・・美梨は、それで良いの?」
「それって?」
「だからその・・・お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが愛し合ってないっていう・・・・」
「え~?だって、実際今までそれでやってきてるんだから、それで良いんじゃないの?」
「そ、そんな・・・」
「そんなに嫌なんだったら、自分達でどうにかすれば良いって思うな。もう大人なんだから、それくらい出来るでしょお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも・・・もう限界おやすみ~・・・」
「あ、ああ・・・お、おやすみ・・・」

妹は寝てしまった。
そうなると、可憐は急に取り残された感じがして、心細くなって布団に改めて横になった。