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本日、立海テニス部はお休みである。

ただ、お休みなのはあくまでテニス部であって。
他の部活や生徒には関係ないので、テニス部は休みでも学校は実は普通に入れる状態で、色んな部活が出入りしていたりする。

なので、今の紀伊梨には非常に都合が良かった。

「こんちわー!」

紀伊梨は今日、学校へ赴いた。
とはいっても、大した用事じゃない。
ただ、母親に促されて宿題をやろうとしたら手元にドリルがなく。
そうだ、学校のロッカーに置きっぱなしかも、と思って取りに来たのだ。

「えっとー?ロッカー、ロッカー、ロッカーの鍵はー?あり?あ、あったあった!」

なんてかちゃかちゃやっている紀伊梨の背後に、影。

「こおら!」
「うひょおっ!?誰っ!?誰!?あ!」
「って、五十嵐!」
「正ちゃーん!やほー!」
「正ちゃんじゃない!先生と呼べ!それから、不審者じみた真似するな!」
「え、してないよー!ロッカー開けようと思っただけじゃーん!」
「私服で校内に入るなって言ってるんだ!他校性が泥棒しようとしてるようにしか見えないんだよ!」

そう。
紀伊梨はなーんにも考えず、私服で校内に入ってしまった。

制服というのはある意味身分証明のようなもので、原則その学校の生徒しか持ち得ないわけだから、制服というだけで所属を明らかにして歩いてるようなものである。

私服というのは、つまりその逆。
教師からしてみれば、お前一体どこの誰で何用だとなるわけだ。

「全く、どこの不良が潜り込んだかと思えば・・・」
「えー?こーんな可愛いかっこしてるのにー?」
「可愛いかどうかじゃない!場違いかどうかの話だ!・・・で?」
「で?」
「ロッカーの目的は?」
「あ!そーそー、ドリル取りに来たんだよ?えらいっしょー!」
「お。確かに彼奴よりは偉い理由だな。よしよし、そこは感心だ。」
「えへん!あれ?彼奴って誰?」
「まあ、後でな。で?見つかったか?」
「えーとねー、この辺にやったような・・・あ!あったあったー!やったー!」
「お?見つかったか、よし!」
「いぇーい!」

なんてVサインする紀伊梨だったが。

「待った。」
「およ?」
「帰れると思うな。」
「なんで!?」
「当たり前だろ!校内の敷地に入った以上、校則にはしたがって貰うからな!生徒は止むを得ない場合以外、制服着用の事!ほれ、ついてこい!反省文!」
「えーーーーー!」
「直ぐ済むから!」
「やだーーーー!」

新海の直ぐ済むからという発言は、実は強ち不正解というわけでもなく。
面倒なのは確かに面倒なのだが、原稿用紙一枚分、校則を書き写すだけ。
別に何を自分で考える必要もなく、作業でしかない。

つまり集中しさえすればちゃっちゃっと終わるのだが。
何分紀伊梨は、その座学への集中というやつが非常に苦手で。

「もーやだー・・・宿題なんか取りに来るんじゃなかったー、もー・・・」
「う・・・いやまあそう言われると、それ自体は良い事だから、今後もちゃんとやってくれとしかっていうか・・・っていうか、そもそも忘れるなよ!」
「忘れちゃうものは忘れちゃうんだもーん!ってゆーか、正ちゃんだって忘れ物は沢山してるっしょー!雅せんせーから聞いたことあるお!」
「うぐ!そ、それを言われると・・・」

とか会話しながら新海の後についていくと、先ず職員室に通された。

「あり?もしかして職員室でやる感じ?」
「いや?流石にそれはな、お互い居心地悪いだろうし。そうじゃなくて、逃走防止だよ。」
「とーそー?」
「この隣の部屋を使うんだ。出るには職員室を絶対通らなくちゃいけないから、こっそり脱走が出来ない。」
「そんな事しなくても紀伊梨ちゃん逃げたりしないお?」
「そうだな、五十嵐はそうかも。でもなあ、居るんだよな隙あらば脱走するような奴・・・」

新海に促されて部屋に入ると、先客ーーー正に、見ていないと直ぐ脱走するタイプの先客が居た。


「・・・ん?おお!」
「あー!もーりのおにーちゃん!」