シュークリームというやつは、ざっくり2つの物でできあがっている。
シューの皮。それと、中身。
これらを比べた時、どちらがハードルが高いかと言うと、それはもう。
「圧倒的に、皮の方です。」
「そうなのっ?」
「はい。ホイップやカスタードは、簡単ですし、失敗してもやり直ししやすいです。でも、シューの方はなかなかそうも行かなくて・・・」
マジか。怖い。やっぱり面倒そう。
おのおの内心で感想を言いつつ、材料を測っていく。
(小麦粉。卵。バター50g・・・バター50gって、この場合どうやって測るわけ?)
取り敢えず適当に切って、秤に乗せて・・・と作業していると、千百合は視線を感じて顔を上げた。
「何?」
「あ、ごめん!なさい・・・」
とか言いつつ、金町はやっぱりちらちらと千百合を見てくる。
「・・・何。」
「あ、いや、その、」
「はっきり言って。」
「あ、えと・・・その、やっぱ要領が良いんだなあって・・・」
「・・・は?」
「何か、ほらもう計量終わりかけじゃん?私なんか、まだすっごいもたもたしてるし・・・幸村君の彼女となると、やっぱりそつがない人じゃないと、勤まらないんだなあ、なんて・・・」
そつがない人じゃないと、勤まらない。
幸村の彼女が。
・・・いや。
「全然違うと思う。」
「え?」
「明らか私より要領良い人、世の中沢山居るし。」
「あ、そうなんだ・・・?」
「そもそもああ見えて結構、手のかかる子ほど可愛いみたいな趣味あるし。」
「えっ、マジで!?」
金町は、嬉しそうである。すんごく嬉しそうである。今まさに、芸能人のプライベートを垣間見たみたいなわくわく感でいっぱい。
「・・・人の話とか聞いてて楽しい?」
「えっ、楽しい。私、こういう話大好き。」
「・・・・・・」
「ねえもっと聞いていい?幸村君ってさ、デートとかどこでするの?やっぱテニス?テニスデート?黒崎さんもプレイヤー?」
「いや、別に。私テニスのこと詳しくないし。」
「あ、そうなの?じゃあどこでどんな風に遊ぶの?」
「え、普通に。」
「普通・・・カフェとか?」
「まあ。」
「あと映画?」
「・・・そういえば、映画はあんまりかな。」
「そうなの!?めっちゃ行きそうなのに!?」
「映画の趣味が基本合わないから。」
「へー!じゃあ・・・あ、いや良いや。」
「何よ。」
「いやあ、喧嘩とかにならないのかなって思ったんだけど。幸村君が喧嘩って、あんまり想像つかないなーって思って。うちのキングと違って。」
(キング・・・ああ、跡部か。)
キングって言われて普通に話が通じるあたり、千百合ももうすでに馴染んでいる。あの跡部の、幸村さえも持ち得ない独特のオーラに。
「まあ、確かに意味もなく人に突っかかったりはしない。」
「だよねー!」
「テニスの時以外は。」
「あ、やっぱテニスの時はちょっと怖い?わかるー!テニスプレイヤーってそうだよねー!って、私もマネジ始めてから知ったんだけどさ。やっぱさー、皆真剣だし。」
「・・・そうかな。」
そうだろうか。
テニスの時でも調子が変わらないのも一定数思い当たるけど。
あの赤毛とか。あの銀髪とか。いや、あれはあれで真剣ではあるんだろうけど。
「でもさー、テニスしてる時の、ちょっと男らしい感じもかっこよくない?まあ私、幸村君のテニスあんまりちゃんと見た事ないんだけどさ、想像で!」
「・・・・男らしい・・・」
「あれ?何か変?」
「あんまり考えたことなかった。大体いつも怪我の心配してるし。」
「・・・・・」
「そうそうしないけど、したらやっぱり大ごとだし。別に普段も、穏やかだけど女らしいわけじゃないし・・・今度は何よ。」
「いやあ・・・なんていうか、うん・・・」
「何。」
「黒崎さんって可愛いなあと思って・・・」
「は?」
「ほら、なんていうか・・・私らはマネジだからさあ?多少の怪我とか慣れっこっていうか・・・ぶっちゃけ、段々あんまり気にならなくなってくわけよ。なあにそのくらい、平気平気、みたいな?」
「・・・・あー。」
「だから、彼氏の怪我が心配っていう発想がちょっと乏しかったっていうか・・・気になるポイントそこなんだ、可愛いーって感じがして。ははは、どっちかっていうと、こっちが麻痺しがちなんだろうけどね、これは。」
その感覚こそ、逆に千百合はわからない。
自分が滅多に怪我しないから、なおさらかもしれないが。
「2人とも、どうです・・・金町さん。」
「はい、先生!」
「あの、なんだか小麦粉が多いような気が・・・」
「えっ?ああー!数字を見間違えたー!」