「新人戦・・・・!?」
丸井ブン太。新人戦内定のお知らせを受け、ビードロズはわっと沸き返った。
「すごーい!新人戦って何なのかよくわかんにゃいけどー!」
「まだ公式試合に出場したことがない選手を、この場合は新人というんだ。」
「ほー!あ、ブンブンはこの夏出てないから!ってことですな!ん?ってことはー、ゆっきーたちは、」
「ええ。幸村君たちは、もはや新人ではありませんので、新人戦には出場なさいませんよ。」
「え、待って。新人戦内定ってさ、引いては来年の内定ってこと?」
「いや。部内でちゃんと試合して、最終決定するよ。今年の春先にやったのを、見ててくれただろう?」
「はー。それはそれでやるんだ。仮内定的なことか。」
「ただ、俺達とて新人戦に出す選手を適当に選んでいるわけではない。」
「そうだね。少なくとも来年、部内戦で勝ち残るんじゃないか?って踏まれた選手ではあるよ。」
「出世したなあブンブンくんw何か内定とか出世とか、会社員みたいだけどw」
「わああ・・・!すごいです、あれ?えっと、他にも出る方は居るんですよね?」
「ああ。まだ何人か、その内呼ばれるじゃろうな。」
「まあ、でも・・・正直、悔しいって気持ちはあるな。期待されてるのは確実だから。」
「そうですよね・・・部内でも競争ですもんね、レギュラーの座って・・・」
「あ、でも春日は、ちゃんと喜んでやってくれよ?」
「え?」
「俺らは出てないのに、とか気にしなくて良いから。思う存分喜んでやった方が、ブン太は嬉しいだろうからさ。」
「・・・はい。」
(新人戦・・・!)
見られるかもしれない。丸井の公式試合で戦う姿が。
「でさー、そのブンブンはどこ?」
「ああ、ちょっと遅れるよ。頼みごとをしちゃってね。」
「頼み事?」
「一条の家に、テニス部の資料を渡してくれるように頼んだ。」
ピシ。
と、千百合と棗が固まった。
テニス部は、まあそういう反応するだろうなと思っていたので、苦笑気味。
真田だけが、何の問題も感じることなく話を進める。いやまあ、実際問題なんて、ないといえば無いのだが。
「そろそろ2学期が始まる。マネージャーとなってくれるよう、本格的に交渉を行うには良い頃合いだからな。」
「そっすかw・・・そっすかw」
「・・・・・・・」
「しょうがないんだよ。行ける人が丸井しか居ないんだ。林さんは、一条さんの中ではテニス部じゃなくて友達に入るだろうし。」
「・・・・・・まあ、信用してるけど。テニス部のルールを。」
「テニス部のルール?」
「禁止でしょ。何をとは言わんけど。」
「禁止したところで、効果のほどはどうかの。」
「まあ、人の心の話ですからねえ。」
「ふーん。でもでも、ちょっと渡してくるだけっしょ?すぐ来るよね!」
「ああ、そうだと思うぜ?ブン太も来たがってたしな。」
「だよねー!そーだ、あれだったらいっちーも一緒に来れば良いんだよ!」
「い、いや、それは・・・」
「え、何何?駄目ですよー、ちゃんと仲良くしにゃいと!」
「そうですよね、確かにチャンスなのかも・・・」
「えええ、そんな春日、お前まで・・・!」
「え?わ、私、そんなおかしなことを言いましたか?」
「あ、いや・・・・う、ううん・・・」
柳はもう、黙って苦笑いするしかなかった。
微妙な問題だ。あまりにも微妙過ぎる。
しかもだ。何故、と聞かれると苦しいから言わないけど。
(丸井が間に合わない確率・・・少なく見積もっても、84.008%、というところだな。)
多分。そうスッとは帰って来られない。
高い的中率を誇る柳のデータは、そう告げている。
その頃、まさか丸井が自分を訪ねてくるなんて知らない郁は、家でいつも通りごろごろしていた。
もう夏休みも終わりか。ずっと夏休みなら良いのに。
とか、毎年なら思う所だが。
(新学期か・・・)
新学期になったら。
学校が始まったら、きっと今より会える回数が増える。
(いやだから!別に会いたいわけじゃ、)
「郁ー!」
母親の呼ぶ声に、郁は上体を起こした。
なんだろう。ご飯かな。
「何だい?」
「お客さん来てるわよ?」
「客?」
「何か、男の子。丸井君って言ってたけど。」
郁は心臓が止まるかと思った。