「少女趣味と言うかなんというか。」
「あはは。確かにね、ちょっとロマンチックすぎるかもしれない。」
いろんなことにこだわりのない千百合は、別に進んではやらないけどそこまで強固に嫌!というほどでもないので、流されて列に並んでいる。
「でも、俺は結構好きだよ。こういうの。綺麗だしね。」
「ああ、まあ。風景として。」
「それもそうだけれど、こうやってキャンドルを流すことで、風景づくりの一端を担ってるんだなあって思うと。」
「芸術・・・え、これ芸術なの?」
「そうだよ。これだって立派な芸術・・・ああ、順番だ。」
千百合、どれにする、と言われて見渡して見ると、千百合も仁王と同じことにすぐ思い至った。ああ、ピンクのハートめっちゃ売れてる。
(まあ、妥当っちゃ妥当か。いかにも、って感じだし・・・・)
こういうものを見るにつけ、千百合はちょくちょく思っているのだが。
乗っかった方が良いんだろうか。こういうの。
乗っかるんだったら実際に恋人が居る今をおいて他にはないと思う。が、かといって乗っかりたいか?と言われるとちょっと困る。そもそも、恋人が居るからって浮かれるタイプじゃないし。
しかし、自分の嗜好と幸村の嗜好は、あまり関係がないのであって。
「・・・・・」
「?どうしたんだい?」
「いや。精市って、ああいうのどうなのかと思って。」
「ああいう?」
「ああいう。」
千百合が指さす先には、正にカップルでピンクのハートを流そうとしている男女が居る。もっと付き合いたての頃は、恥ずかしすぎてこういうことを話題に出すことすらできなかったのに。成長したもんだ、と思うような、この場合成長ってなんだとも思うような。
「私割と露骨に興味ないんだけど。精市ってどうなのかと思って。」
「俺は・・・そうだな、俺もああいうのにはそれほど興味はないかな。」
「あ、そう。」
「うん。別に嫌悪感も無いから、やりたいって言われたら喜んでやるけど。自分から言い出すほどじゃ。」
「へえ。」
そうなのか、覚えとこう。と思っている間に、順番が回ってきて千百合は選び始める。
迷うことなく青の丸に伸びる手に、幸村は小さく笑った。千百合は本当に好みがはっきりしている。
「俺。」
「え?」
「ピンクのハート型には、そんなに興味はないけど。でも、こういうのは結構好きなんだ。」
そう言って、幸村は青い丸型を取った。
千百合は目を見開いた。絶対水色の花形だと思っていたのに。
「・・・・・」
「ふふっ!会計しようか。」
「待って。」
「千百合?」
千百合は自分の分と幸村の分を返した。
そして代わりに、青い花形を2つ。
「はい。」
「・・・ありがとう。嬉しいよ。」
「ん。」
幸村は、千百合のこういう所が本当に好きである。
だから、誰にも聞こえないように「好きだよ」と囁いてしまったのも、しょうがないことだから許してほしい。