Night beach - 6/8


「・・・種類が、」
「種類が多いのも選びにくいものだな、とお前は言って白の四角型を選ぶ。」
「・・・流石だが、何故そんなことまでわかるのだ。」
「そんなに大したことじゃない。基本のパーソナルデータが分かっていれば、造作もない事だ。」

「・・・・・・」

真田と柳が会話するのを聞きながら、紫希はそっと列から離れた。

「む?春日、どうした?」
「あの、私、買わなくて良いかなと・・・」
「何故だ?こういったことは嫌いか?」
「いえ。丸井君がまだなので。」

く、と柳が少し眉を寄せた。

「そのことだが、春日。」
「え?」
「言おうか迷っていたが、俺のデータ上、丸井は遅れるというか・・・間に合わない可能性が高い。」
「何故だ?資料を渡すだけだろう。一条の家はそれほど遠いのか?」
「・・・おそらく、資料の内容について、説明を求められているはずだ。」
「え?」
「む。」

今、便宜上柳は「資料の説明」と言ったが。
もちろん、柳はわかっている。資料の説明というより、正確には「郁による丸井の引き留め」が発生するだろう、ということを。

しかし、柳は「資料の説明」という説明でも、できる限りしたくなかった。
だって、この2人。

「なるほど。一条は徐々に、テニス部に対して興味を抱き始めている、というわけか。」
「わあ・・・・!やった、嬉しいです!」
「うむ!それも、お前の働きあってのものだ。礼を言うぞ、春日。」
「いえ、そんなの・・・丸井君が頑張ってくださってるからで、」

(ああ・・・・)

ほらね。

紫希も真田も、丸井と郁の件に関して、色恋沙汰よりもテニス部の利益を優先して考えてしまう。丸井と郁の友情の構築は、テニス部のために無条件に歓迎されるべき、と思っている。

それでしわ寄せがくるのは誰かなんて、柳は友達として、考えたくない。

「・・・話を戻そう。とにかく、丸井は間に合わないと考えて良い。だから、遠慮せず混じると良い。」
「・・・ありがとうございます、柳君。でも私、遠慮します。」
「何故だ?」
「その・・・もしも間に合ったら、って考えてしまって。もしも間に合ったら・・・それで、私も混じってしまっていたら、丸井君は並ぶとしても、一人になってしまいます。私・・・もし私が逆の立場だったら、寂しいなと思うので・・・」

間に合わなくても、丸井が寂しい思いをするリスクを取るより良い。紫希はそう思う。自分なら、一人は寂しいと思うから。丸井はそんなこと考えないかもしれないけど、それでも。

あと、ちょっと。
ちょっとだけ、間に合って欲しい、という希望のようなものも。

「あ!あの、柳君のデータを信じてないわけじゃないんですけれど、でも、」
「いや、そんなことは気にしなくていい。不愉快になど全く思っていないし、可能性が高いというだけで、来ないと限ったわけではないのは事実だからな。」

こう言われると柳も、なおも混じるべきだと勧める気にはなりづらく。
結局紫希は列から外れ、一人キャンドル流しへの参加を見送った。


真田も柳も紫希自身も、問題ないと思った。他のメンバーに聞いても、まあ本人がそれでと言ってるんだし、良いじゃないのと言っただろう。


ただし、それはこの30分後。そろそろキャンドルが売り切れるし、丸井も来そうにないし、ひとしきり見たし。帰るかなとなった時に、唐突に覆ることになる。