Present - 1/4


紫希の指導の下、可憐は昨日お菓子を作った。
しかし、たままたまではあるが、作ったのはシュークリーム。つまり生菓子。

なので、可憐は心の準備云々以前に、翌日にはもう渡すか渡さないか決めなければいけなかった。

「・・・・・・うーん・・・・」

氷帝には部室棟がある。
備え付けの設備には冷蔵庫もあって、何か冷やして置いておくものを持ち込むことも簡単。

いずれにしろ沢山作ったので、たった一人に全部あげるわけにもいかないし。取り敢えず持ってきて冷蔵庫にしまった状態で部活に勤しむ可憐だが、考えるまいと思っていてもふとした瞬間結構上の空になってしまう。

「・・・・・・・」

「49!50!よし、持ち替えろ!1!2!」

(跡部君・・・・)

どうしても跡部を見てしまう。

可憐は作ったシュークリームの当てについて、忍足にどうしてもあげる勇気が出ないのなら、割と真面目に跡部に全部譲れば良いのでは?と思っていた。

別に跡部は欲しがらないだろうが、流石に捨てられもするまい。そんなことをする男じゃない。
それに、名目もある。日頃のお礼に、とかいって。生徒会の作業に疲れた時に、コーヒーと一緒にでも食べてよ、とか言っておけば、さらに良いかもしれない。

それに、向日や宍戸や芥川にはあげづらい。忍足にもあげたら的な方向に話が進むのが容易に想像できる。忍足は網代から貰うだろうからと言えば納得してくれるだろうが、流石にその申告を自分からできるほど、可憐はまだ自分の感情に馴染んでいなかった。

が。
跡部にあげるのも抵抗がないわけじゃない。

もちろん、本音を言うと忍足にあげたいからという気持ちもある。それもあるが。

(・・・・跡部君、受け取ってくれるかなあ・・・・)

跡部景吾。
彼は傍若無人かつダイナミックな性格だが、反面大雑把ではない。むしろ、雑さとは程遠い人間である。
彼の観察力や洞察力はおそろしいほどに深く鋭く、膨大な人数の部員に対して、今誰がどのような状態なのか把握することができる。可憐が仕えるキングは、そういう人柄だ。

だから、突っぱねられるかもしれない。
見透かされたばかりか、自分当てじゃないものを自分に押し付けてくるな、とか言うくらいまでは普通に有りうる。

もしも本当にそんな事言われたら、可憐は多分打ちひしがれる。
人に見透かされていることも恥ずかしいし、跡部に軽蔑されたり見放されるのも嫌だし、突っ返されたシューは行き所がなくなる。

いや。
跡部のために作ったわけじゃないものを、「跡部のため」と言って出すなよというのは、実に正論である。可憐もそれはわかる。跡部に失礼であるということも。

でもさりとて、他にどうして良いか、わからない。
流石に捨てるのは勿体なさ過ぎて出来ないし。

(どうしようっ、あともうちょっとで部活終わっちゃうよ、どうしようっ、どうしよう・・・!)






「・・・・・・」
「・・・・おい!」

ドス。と向日にラケットで背後から肩を叩かれて、忍足はちょっと前に傾いだ。

「何やねんな。」
「こっちの台詞だっつの。何をぼーっとしてるんだよ?」
「いや、可憐ちゃんが。」
「桐生?」
「何ややたら跡部の方見てるさかい、どないしたんやろ思うて。」
「へー。喧嘩でもしたんじゃねえの?」
「跡部て、喧嘩はせえへんやろ。一方的に売られることが多いだけで。」
「・・・・言われてみたらそうだな。」

向日は納得した。確かに、跡部は喧嘩を売られることがべらぼうに多いだけで、それを買ってまともに喧嘩してるのなんて見た事ない。

「んじゃあ、桐生の方が何かを一方的に気にしてるんじゃねー?」
「何を。」
「何か。知んねーよ、俺がそこまで!」

ほら、次メニュー行くぞ、と促されて、忍足は歩き出した。