Present - 4/4


「・・・お、忍足くー--」
「大丈夫なん!?」
「え?な、何がっ?」
「・・・・忍足君。可憐ちゃんは今日は、別に診察に来たんじゃありませんのよ。ね?」
「あ、う、うんっ!そうだよっ!私、どこも悪くないよっ!安心してっ!」
「・・・・はあ。」

良かった。忍足が小さく呟いたのが、可憐の耳に届いた。

「忍足君は、どうしてここに?」
「跡部に、此処に居るて教えて貰うてん。病院行った、としか言われへんかったさかい、もしかして今頃に、頭打った時の影響が出たんやろかとか思うて。」
「え?でも結構前だし、」
「脳はほんまに、何があるかわからへんねん。未だに不明な部分の多い器官やし、何かあったらまずは、最初にかかった病院に行くのんが普通やし。」

おまけに跡部が、「運が悪ければ鉢合わせる」とかよくわからないことを言うから、余計焦ったと思う。

(まあ、落ち着いて考えたら、ほんまに具合悪いんやったら跡部がもっと焦ってるかもしれへんけど。)

少なくとも、可憐一人で病院に行かせるような真似はすまい。こういうことに気づかない辺り、忍足も大概焦っていた。

「そういうたら、可憐ちゃんは桃崎さんに会いに来とったん?」
「え?え、ええと・・・うん、まあ・・・そんな、感じ・・・かな・・・・」

梓は、ちら。と横目で可憐を見た。

(・・・なるほど。)

「・・・可憐ちゃんは、差し入れを渡したい方に渡せないそうなんですの。」
「え?」
「あ、梓ちゃんっ!?」
「喜んでくれそうにないそうですわ。ですから、僭越ながら私に頂けるかと思っていたところですの。忍足君も、いかがかしら?ほら、3つありますわよ。」

可憐はあわ、あわ、と口から声なき声がでた。
しかし梓的には、嘘は言ってないから大丈夫と思っている。誰も「要らない」と面と向かって言われた、なんて言ってないし。忍足だとも忍足じゃないとも何とも言ってない。

しかし忍足は一瞬、く、と眉根を寄せた。

「・・・・忍足君っ?」
「・・・どうかしまして?」
「・・・いや。貰うてええんやったら貰うわ。」

可憐も梓も知らないことだが、忍足だけは知っている。

跡部は「お前も行ってやったらどうだ」と忍足に言ってきた。
最初は以前頭部を怪我したことかと思い、お前の父親が診たんだから今回も付き添ってやったら的な話かと思っていたが。

(食うてやれ的な話なんか。俺にこれを。)

誰だか知らないけど、可憐が渡したがっている誰かは、これを渡されても喜ばないと。
そうして行き場を失くしたシュークリームの処理を、お前も手伝ってやったらという意味だったのだろう。忍足はそう解釈した。

なるほど。
確かに、「運が悪いと」鉢合わせすることになる。
可憐が気の毒な目に遭った結果として手作りお菓子貰ったって、全然嬉しくない。

(・・・いや。いやまあ・・・いやまあ、この際はええわ。)

頭にふと過ったことはひとまずおいておくとして。
可憐としては、誰にも食べられないままずっと残ってる方がより嫌だろうから。と思って忍足が手を出すと、可憐はシューの入った箱を思わず引っ込めた。

「あ、あのっ!良いよ、その、忍足君はお腹いっぱいだろう、し・・・」
「あら?どうしてですの?」
「・・・・ああ。別にええで。そない大した量ちゃうし。」
「ですって。決まりですわね、どちらにどうぞ忍足君。」
「ほんなら、お相伴させてもらうわ。」
「・・・・・・」

ここで、でも。となおも言い募ることもできたけど。

可憐の、自分が嫌だと思う時はこういう時も該当する。
あんなに気が進まなかったのに。
もう9割方振られたも同然と分かっているのに。

でも、いざ目の前にしたら、どうしても自分の心に抗えないのだ。

「・・・・ど、どうぞ・・・」
「おおきに。」

そうだ。だって可憐だって、本当は食べて欲しかった。
食べてもらった後には内心で比べられているとしても。
一番じゃなくても。本当は貴方当てなのよと言えなくても。

「美味しいわ、おおきにな。」

この一言をもらう事を優先してしまう。
私はバカなんでしょうか、という可憐の内心の問いに、神様は応えてくれない。