Aptitude - 7/9


「ふっ!」
「タアッ!」
「・・・らあ!」

「15-0!・・・美梨、暑くないっ?」
「大丈夫ー。」

審判役をやる姉の隣・・・とはいっても、美梨は地面だが、とにかく見学を続けている。ただ、この審判という奴は、動かないためとにかくじりじりと暑いのだ。一応タオルを2人とも頭からかけているけど。

「・・・あっ!タッチネット!」

「げ!」
「おっし!ラッキー!」

「・・・?おねーちゃん、タッチネットってなーに?」
「え?ええと、簡単に言うと、ラケットでネットに触っちゃったってことかなっ。失点になるんだよっ。」
「え、今触ってた?」
「うんっ。でも、慣れてないと見づらいかもっ。」
「へえ・・・・そーいうのって、自分じゃわかんないの?自己申告しないの?」
「ううん・・・わかる時もあるけど、必死になってると自分じゃわかんない時もあるしっ。」
「ふうん。まあ、審判に見つかってないんだったら、わざわざ自分で言う理由とかないもんねー。」
「・・・うん。」

(あれっ。)

てっきり美梨は、姉のことだから、そんなこと言うもんじゃないとかスポーツマンシップがどうとか、そういう話になると思ったのに。あっさり肯定された。

「・・・アドバンテージ、サーバー!」

コールしながら、可憐は言われたことを反芻する。
ずっと前、跡部に教えられたことだ。


『はっきり言うが、自分の失点を自己申告しない奴なんざ、そこらへんにごろごろ転がってるぜ。』
『え!?』
『そして、俺様も部活では「自己申告しろ」と指導する気もねえ。』
『な、なんでっ!?』
『指導しても役に立たないからだ。』


跡部が本気で指導すれば、多分成果は上がるだろう。ただ、それはあくまで部活内の話。公式試合では、相手が馬鹿正直に自分の失点を言い出してくれるとは限らず。そして、公式試合に役に立たないことを方針に掲げる気はない。


『じゃあどうすれば良いのっ?』
『あーん?簡単なことだろうが。

勝てば良い。誰の目から見ても明らかな形で、相手を負かすんだよ。』


「あっ!しま・・・」

しまった、と相手が言う前に、向日はもう飛んでいる。
美梨が「あ」の字の形に口を開けているのがわかるくらい、高く。

「そお・・・りゃあっ!」

ドン!と良い音がして、相手のコートにスマッシュが入った。

誰にも文句の付けようがないポイント。そうだ。ああいう風にポイントを取らないといけないのだ。

「わああ・・・!すごいすごい!ねーおねえーちゃん、あのおかっぱの人すごいね!」
「ゲーム向日、ツーゲームストゥワン!・・・おかっぱの人じゃなくて、向日君っ!名前が書いてあるから、ちゃんとボード見てっ!」
「お姉ちゃん、あの人テニス部でどれくらい強いの?」
「聞いてる!?向日君かあ・・・1年生の中だとトップレベルだけど、2・3年生に混じるとどうかなあっ。良い勝負はできると思うけどっ。」
「・・・そうなんだ。」

あんなにすごいのに。1番じゃないんだ。
美梨はすっかり溶けたフラペチーノをまた一口飲んだ。