一方、伊丹、内川、榎本の3人は可憐を置いて一足早くクラスに戻ることにしたわけだが。
「で?」
「「で?」」
「どう思う?」
「うーん・・・」
「私的な見解で良い~?ま、それしか言えないんだけど~。」
「良いよ、どうぞ。」
「ぶっちゃけ、自覚したって言うより、負けを悟った的な気配あるよね~。」
「・・・マア。」
「私も同感。」
3人は、新学期に入って可憐の様子が変わったことにすぐに気づいた。
一時的におかしいと言うより、変わってしまった、という感じがした。
氷帝テニス部が優勝を逃したのは知っていたので、それ絡みかと最初は思い励ましたのだが、どうも違う感じがする。
ひょっとしてひょっとすると、と思い注意深く見ていたが、どうやら当たりだ。
「夏休みで気持ちを意識するかな・・・とは思ってたけどね。」
「でもさあ、ブッチャケ、夏に入る時点でこう・・・可憐がどうのっていうよりあっちがさあ。」
「まあね~。何もかも時すでに遅し感バリバリ~。」
夏休み前の時点ですでに、もう忍足と網代の仲は消化試合・・・両片思い状態に入ってしまったのも、3人はうっすら気づいていた。
いっそこのまま自覚無しの状態で、次の恋とかに移ってくれないかな・・・とか思っていたのだが、人生はさほど甘くなかったらしい。
「なまじ部活は好きなだけにね・・・」
「物理的に距離取れないってしんどいよね~。」
「もー!いっそ、さっさとアッチがくっついてくれたらさあ、すぱーっと諦めもつくかもしんないのにさあ!」
「あ、私。」
「え?」
「そこだけ引っかかってる、ずーっと。」
「「え?」」
伊丹は周りに誰も居ないことを目で確認した。
「網代さんて、聡いじゃん。」
「ウン。」
「だから私、網代さんはもう自分の気持ちに自覚あると思う。し、同時に忍足君の気持ちも感づいてるんじゃないかなー、と思うんだよね。」
「それは私も思う~。」
「でしょ?で、ここからなんだけど。そんな聡い網代さんが、可憐の気持ちだけ気づいてないなんてことあるかな?」
「「え?」」
この発想に、内川と榎本は顔を見合わせた。
「・・・え、知ってるってコト!?」
「え~?でもそれだといろいろおかしくない~?」
「そう、おかしいの。私、そこが引っかかってるんだよね。可憐の気持ちに気づいてるのなら、わざわざ今日みたく忍足君がサロンに居るからとかって、会わせなくてもと思う。普通会わせたくないでしょ、恋敵と好きな人をなんて。最初は自分も同席して、牽制でもするつもりなのかと思ってたんだけど・・・」
ところが、行ってみたら網代は別に居なかった。
伊丹はそれを踏まえて、網代がどういうつもりなのか完全に見失ったのだった。
「・・・気づいてナイ、とか?」
「それは無理があるくない~?網代さんだよ~?」
「うん、私もそれは無理があると思う。」
その手の抜かりは、網代に似合わない。もちろん可能性は0ではないが、やっぱりこういう時は可能性が高い方を採用するのが定石。
「でもじゃあ、何でアンナことするのか説明がつかないじゃんかよー!」
「何かがあるのよ、何か。わからないけどさ。」
「・・・網代さんじゃなければな~。単純に余裕とか油断してるとか、そういう線があるかもしれないんだけどね~。」
「ないなあ・・・」
「ですよね~。」
余裕とか油断、だって。なんという似つかわしくない響き。ちょっと網代とやり取りしただけでも、それはわかる。
「まあ、私らが考えてたってしょうがないんだけどさ。」
「外野だしね~。」
「デモ、友達じゃん!まあ、してやれることはないっていうのは、そうなんだけどさ・・・」
「・・・・ね。」
もはや、忍足と網代がくっついた方が良いのかそうでない方が良いのか、どちらが可憐にとってマシなのかという段階。
ここまで来てできることなど何もない。
可憐にとってより良いようにしてやりたい、と友人として思うけど、そのより良いとはどういう形なのかさえもわからない。
可憐本人でもわからないのだから、友人に分かるわけもなかった。