東京都、渋谷区。
其処に、今年の関東レインボーフェスタの開催地がある。
「わあ・・・!」
「へえ。」
「おおおうw」
「でっ・・・・かああああああああい!」
紀伊梨はテンションに任せて思わず叫んだ。
関東レインボーフェスタ。
意外に歴史のあるこの軽音楽フェスタは、毎年渋谷の一角を4ヶ月前から抑えて行われる。
半分に割ったドーナツの様な形の舞台。
舞台右手の方には、バックにキラキラと光るリボンの飾りが設えられている。
「9本の金リボン、ですか。」
「ミューズねw左は竪琴だから・・・」
「オルフェウスですね。」
詩と歌。楽器とメロディ。
それらを束ね、中央に飾られているのは、ロック調に仕上げられた太陽と月桂樹のオブジェクト。
「「アポロン!」」
揃って言った紫希と棗を、紀伊梨と千百合はわけもわからず振り返った。
「アポロー?」
「苺かw」
「あ!あれだ!ポル/ノグ/ラフ/ィティが歌ってる!」
「アポロじゃないんです紀伊梨ちゃん、アポロンです。」
「何、アポロンって。」
「神様だよw」
「ギリシャ神話のお話です。」
紫希は右手を指差した。
「彼方の、9本の金のリボン。あれは、9人の女神、ミューズの象徴です。」
「ミューズって、なんか最近聞かなかった?」
「あ!あれっしょ、あれ!ラ/ブライ/ブ!」
「そうそwあれのμ’sっていうのは、9人のキャラクターでミューズ、っていうモチーフなわけ。」
「へえ・・・」
「音楽だけでなく、文学や教養的な事も司っていますね。で、あっちです。」
今度は左。
「あれはおそらく、オルフェウスの竪琴です。」
「ま、多分楽器の象徴的な感じでしょw」
「そのオルフェウスも神様なの?」
「ええ。ただ、神様と言うよりは竪琴の名手としてのキャラクターが非常に強いです。琴座という星座にもなっていますよ。」
「へえ。知らなかった。」
「おる、ふぇ、ふぇ、おるふぇ、う、す?」
「覚えろw頑張れw」
そんな事言われたって、プトレマイオスやソクラテスが覚えられなくて、世界史の小テストで1点だった紀伊梨には厳しい。
「そして、中央に居るのがアポロン。太陽神、アポロンです。」
「太陽神なのに音楽なの?」
「アポロンは太陽神であると同時に、音楽も司って居るんです。ミューズとオルフェウス、双方の神話にもアポロンは出てきます。明るく熱く、そして音楽を愛せよ。フェスタに相応しい神様と思いますよ。」
「ふうん。確かに、それならぴったりかもね。」
言いながら千百合は、棗に教えられながら目を回している紀伊梨をちらと見やった。
「なんだか、紀伊梨ちゃんみたいですよね?音楽と太陽だなんて。」
「・・・まあね。」
面と向かって言ったら調子に乗るから、絶対に本人には言わない。
そう顔に書いてある千百合を見て、紫希はクスッと笑った。
「わーーん、もう駄目だー!紫希ぴょん教えてー!なっちんの説明わっかんないよー!」
「えええ?でも私の説明も分かるかどうか・・・」
「あんた、わざとややこしい事教えて面白がってたでしょ。」
「バレた?w」
棗だって説明は下手ではない。つまりそういう事だ。
「結局さーあ?どの神様が1番偉いの?」
「1番、偉い・・・ですか?それはアポロンですけど、」
「やっぱりー?そうだと思ったよー!」
紀伊梨は胸を張って、ちょっと偉そうぶった。
「だってだって、真ん中の奴がアポロンだもんね!」
それを聞いて、棗はス、と目を細めた。
「・・・何よ兄貴。」
「いや、あんまり考えたかないんだけどさ。」
「?」
「これ単に演奏するだけのフェスなのかね。」
「んお?」
「どういう事ですか?」
「3つ舞台があるのに、真ん中と脇で差をつけ過ぎじゃない?」
誰だって端より中央に居たい。
あんなにはっきり此処が中央で、此処が横舞台です!と分かれている上に、モチーフの神様迄明らかに中央だけ格上だ。
「何かある、って事?」
「かもね。」
「誰かに聞けたら良かったんですけれどね。」
「誰も居ないよねー!」
始まるのがまだまだ先の上、今日は休日。
ステージを作る作業の人すらも見当たらず、勿論自分達の他の出場者なんて。
と一同が思った時。
「なあ!君・・・達もフェス出るの?」