Outing 2 - 5/5


笛寺と手を振って別れた後、フェスの舞台前で千百合は溜息を吐いた。

「・・・はあ。つっかれた。」
「嵐のようでしたね・・・」
「濃い連中だったわw」
「うーん!フェスが楽しみですなあ!じゅんじゅん絶対上手いよ!」
「分かんの?」
「手がねー、超綺麗だった!」

さっき手を握った時、紀伊梨は手に豆の痕の感触を感じた。
しかし最近の物ではない。昔出来たものだ。という事はつまり。

「力抜いて叩くやり方知ってるって事かw怖えw」
「棗君も出来ますよね?」
「何時もの自画自賛だから。」
「ちょっとは褒めてよ妹よー。」
「い、や。」

にべもなくそっぽを向く千百合。

「そーやって可愛げのない態度だから、今みたいな時に身につまされる事になるんですぞw」
「大きなお世話よ!」
「まあまあ・・・」
「でもなんだか久しぶりに聞いたよねー!あの「なんとかちゃんの方が可愛いー!」ってフレーズ!」
「・・・そうですね。」

思い出す。
もう3年も前の事。

「若者怒るな来た道だ、とか言うけどねw」
「なーにそれー?」
「若い人がやる失敗は、自分だって若い時犯したのだから怒ってはいけない、という意味です。」
「えー!でもちーちゃんの言った事は怒るよー!紫希ぴょんにあんな事言うし、おまけに私の事も馬鹿とか言うしー!」
「沖野が叩かなかったら千百合のビンタが飛んでたなあれはw」
「分かってるじゃない。」
「確かに、発言は褒められたものじゃないですけれど・・・」

でも。
紀伊梨は馬鹿じゃないし、リーダーの器だとしても。

自分は。

「紫希ぴょん!」

紫希はハッとして仰け反った。いつの間にか紀伊梨が真正面から覗き込んでいた。

「紫希、又変な事考えてるでしょ。」
「え!いえ、あの、」
「紫希のそういうとこも4年前から変わらんねw」
「紫希ぴょん。」
「紀伊梨ちゃん・・・」
「紫希ぴょん今何考えてるの?」

紀伊梨の真っ直ぐな瞳は、いつでも色んな人を射抜く。今の紫希がそうであるように。

「・・・木崎さんの仰った事も、当たってるなと・・・」
「はあ?何処が?」
「私が楽器をしないのは、舞台に立つのが怖いというのもあります。それは本当にそうなので・・・」
「紫希ぴょんは恥ずかしがりやさんなだけだよ?」
「でも、それならそうとちゃんとしたら良いのにというか・・・」



『甘やかされて!』
『誰かが助けてくれると思ってるんでしょ!』
『馬鹿にしないで!』



「・・・私、ビードロズに、」
「ちょえええーーーい!」
「むぐ!」

紀伊梨は手で紫希の口に蓋をした。

「紫希ぴょん!」
「む、むう、」
「紫希ぴょんはむつかしく考え過ぎー!ビードロズに居て良いかどうかは、リーダーの!紀伊梨ちゃんが!最後に決めるんですー!」
「んむ・・・」
「あんたは真面目なの。あんな言いがかり、まともに受け取るもんじゃないわよ。」
「ま、そうは言っても受け取るのが紫希なんだけどさw」

そしてそれが分かってるからこそ許せなくもある。木崎にとっては勢いで言った事でも、紫希にとっては真剣に悩んでしまう事。

だから千百合は許す気はない。
謝るまでは絶対に。

「・・・口を開くんだったら、考えてからにしなさいよね。」
「おお、被害者はかく語りきwあだ!」
「被害者言うな。」
「なんだかゆっきーに会いたくなって来ちゃったなー!」
「皆で来たかったですよね。」
「ねー!夏は皆で何処か行けるかなー?」
「夏こそ忙しいでしょ、馬鹿。」
「あう!」
「大会終わった直後とかなら大丈夫じゃね?w」
「いっそ、冬とかどうでしょうか?」
「あー!いーなー!北海道行きたいー!雪祭りー!」

あのテニスプレイヤー達は、今も神奈川の空の下、ラケットを振って居るのだろう。一にテニス二にテニス、三か四辺りでようやっと他の事が入るような奴らばかりだけど。

でも、もっと一緒に居たい。

「ねーねー!テニスショップいこーよー!」
「は?」
「お土産買おー!東京のテニスボール!」
「何処でも一緒じゃねえかwww」
「ふふふ。でも、きっと喜んでくれますよ。」