New comers 1 - 2/5


ふっ、はっ、という小さい声がコートの片隅に聞こえる。

夕暮れのテニス部では、丸井と仁王がまだラリーをしていた。
ベンチでは柳生と桑原が審判を兼ねて待っているが、2人はもう制服だ。

他の者は、もう皆引き上げた。明日の新人戦は2年生も出るが、その2年生でさえもう居ない。

「ゲームセットアンドマッチ。ウォンバイ丸井、7-5。」
「お疲れ様です、お2人とも。」

「はあ、はあ・・・」
「ふう・・・」

丸井と仁王は座り込んだ。

しんどい。すごく、すごくしんどい。辛い。
でも。

「・・・・もっかい、」
「できるんか・・・?」
「当たり前だろい・・・はあ、お前出来ねえの?」
「馬鹿言いなさんな、お前さんに出来て俺に出来んわけないじゃろ。」
「言うじゃねえか、今俺に負けたくせに。」
「4勝3敗で勝ち越しとるだけじゃろ?次は俺が取る番じゃ。」

柳生と桑原は顔を見合わせた。

やる気があるのは結構なことだけど、そろそろ止めた方が良いんじゃないだろうか。
と思って2人ともさっきから、折を見てちょいちょい声かけはしているのだが、どうも2人とも聞き入れてくれない。

まあ、自分が同じ立場だったらと考えると、止めるに止められないような所もあるけど。

でもいい加減、と思い始めた所で、涼やかな声が割って入った。

「そこまでだよ、2人とも。」

「幸村君・・・」
「幸村・・・」

すっかり着替えた幸村の後ろには、同じくもう帰る姿勢の真田と柳も居る。

「気持ちは分かるけれど、これ以上は明日に響くよ。休息やコンディション管理も実力の内だ、もう止めておいた方が良い。」
「・・・わかった。」
「プリッ。」

ちゃんと返事をしたまえ仁王君、そうだ大体いつもお前は、と、生真面目コンビである柳生と真田から非難されながら、仁王はさっと立ち上がって更衣室に引き上げていった。

(・・・くそ。)

丸井は、あんなさくっとは立てない。
こういう所がやっぱりスタミナ不足なんだよなあ、と思い知らされる。

「丸井。」
「幸村君?」
「どうかな、調子の方は。明日は上手くやれそう?」

上手くやれそう。
そう聞かれちゃうと、もう返事は一択しかなくなるのが男の子という生き物であって。

「余裕余裕。任しとけって!」
「ふふ、そう。それなら良かった。」

いつもと同じ、穏やかな微笑で幸村は続けた。

「明日、皆も大丈夫だって。」
「ん?」
「ビードロズの皆だよ。予定を空けられたから、皆で来るって。頑張ってね?」

あくまでにっこり笑う幸村は、もちろんわざと言っている。

無様な負け方するわけにいかないんだぞ、と言ってるのだ。2重の意味で。

ちょっと可哀想かなとは思うけれど、これも幸村としては期待してのことでもある。
このプレッシャーに耐えられないと、立海でレギュラーは張れない。

丸井は、今レギュラーの椅子が近いプレイヤーなのだ。だからこそ。

「・・・OK!」
「うん。わかってくれてるなら良いんだ。それじゃ、明日ね。」
「おう。」

「・・・・・・」

笑って幸村を見送る親友の背を、桑原は複雑な思いで眺めた。

丸井は丸井なりに無理してる。
だから、無理するなよと言ってやりたい気持ちはある。

それと同時に、羨ましい気持ちもある。
丸井は明らかに、自分よりリードしている。新人戦に選ばれるというのはそういうこと。

親友として。チームメイトとして。競争相手として。
桑原と丸井の間には関係性が多くて、こういう時は何て言えば良いのかわからない。

(・・・春日ならなんて言うかな。)

紫希は取り敢えず、今は友達だから。
友達としての言葉が出てくるかな、と思った。