New comers 2 - 1/7


「はああああ・・・」

翌日。
新人戦の会場に向かいながら、紫希はバスに揺られて長い息を吐いた。

「紫希ぴょんだいじょーぶー?」
「だ、大丈夫です・・・というか、私はそもそも見てるだけなので・・・」
「いやでも、俺も今日は怖いよwどうなんのかなw」
「別に負けたからどうってわけでもなくね。顔合わせみたいなもんでしょ。」
「そうは言うけどさw」
「だいじょーぶだよー。ブンブンもニオニオも強い強い!」

今日は新人戦である。

ビードロズは今までずーっとずーっとテニスの試合=幸村みたいな感じがあったので、負ける心配なんてほとんどしたことがなかったが、今日は違う。
幸村は出ない。真田も柳も出ない。見てるだけ。

今日試合するのは、丸井と仁王。新人戦の抜擢メンバーである。

もちろん、千百合の言う事も一理はある。
ここで勝ったからって別に次の夏のレギュラーの椅子が確約されるわけじゃないし、逆に負けたからって椅子が未来永劫取り上げられるわけでもない。どうせ次の夏のレギュラーはまた部内の試合で決まるんだから。

でも。

(勝てますように・・・!)

必死に祈る紫希の脳裏には、いつか見たランニング中の丸井の姿が過っている。

休みの日でもああやって、テニスのために頑張って。
どうかどうか、あの努力が報われますように。

「・・・・・・・」
「千百合っちどったの?」
「いや。ちょっと懐かしくて。」
「ほ?」

自分も紫希みたいにしていた経験があった。
千百合が生まれて初めて幸村の試合を見た時は、関係性としては友達でしかなかったけど。でも、付き合いだすようになったら、何度も見たはずの幸村の試合がまた別の映り方をするようになったっけ。

そう考えると、紫希はまだ付き合ってないどころか、好きだという自覚もないまま今の状態なわけだ。

(まあ、私の場合は付き合いだすようになってから、本格的に好きになったみたいな所あるからな・・・)

「・・・本来紫希みたいなのが正しいのかも。」
「ねー!何がよー!うおっと!」
「紀伊梨ちゃん、大丈夫ですか!?」
「立つなよw危ないからw」






「・・・・・・・」

ふ、と軽い息を吐いて、丸井は伸びをした。
一足早く会場入りしている選手陣。そこかしこに居る人、みーんな自分の敵だ。

仁王もさっきから適当な所に腰かけて、手をぶらつかせている。細かいコンディションが気になるのは、皆同じ。新人戦だから、今日試合するのは皆、今日が初の公式試合になる「新人」だ。

「ブン太、どうだ?調子の方。」
「ん?上出来上出来!」
「ほんまにそうなんか?」
「見えねえってこと?」
「確かに調子悪そうには見えんが、やたらハイになっとるように見えるぜよ。」
「ああ確かに、今日の丸井君はそういう感じですね。」
「マジ?自分じゃわかんねえけど。」

(・・・春日は上手くやってくれたんだろうな。多分。)

桑原がやったのは、声をかけてやって、という所まで。具体的に何て言ったのかまでは知らない。ただ少なくとも、マイナスにはなってないようだ。

「丸井、仁王。」

幸村がやってきた。
手に何かを持っている。

「2人とも、調子は大丈夫かい?問題ない?」
「おう!」
「まあまあじゃ。」
「ふふ、そう。良かったよ。それじゃあ、これ。」
「「これ?」」
「はい、どうぞ。」
「・・・・・マジ?」
「今なんか、渡すタイミングは。」

2人に手渡されたのは、リストバンドであった。

レギュラーに渡されるのはもちろん、公式試合に出る者は皆これを付けていなくてはならない。

練習中に渡しとけよと思われそうだが、練習はあくまで練習。公式試合に出られるようになってからが、洗礼の始まりであり本番だ。

味方のコンディションを進んで崩すような、このえげつないやり方。王者たるもの、これくらい跳ねのけてくれないと困る。

(うわ、重・・・)

ずしっとくる。
手首というのが、また憎いというかなんというか。

丸井が隣の仁王を見やると、仁王もまた違和感ばりばりの顔で自分の手首を眺めていた。

今はまだ、重いなあくらいのものだけど。試合になるとこれが効いてくるのは、もうわかりきっている。

「今日は頑張ってね。俺達も見ているから。」
「OK。」
「ああ。」

そう。
今日は皆が見ている。

(・・・一番前か。)

良いぞ。上等だ。

丸井は不敵な笑みを浮かべた。