New comers 2 - 2/7


「わー----!え、すごいすごーい!」
「こ、これはちょっと・・・」
「やばいなwテーマパークかよw」
「はあ・・・・」

今日の会場についたビードロズ一同は、人の多さに驚かされる羽目になった。

当然と言えば当然というか、夏の大会では地区予選と県大会でふるいにかけられ、そこから関東大会になるのに、新人戦は関東中学校にいきなり出場権が与えられる。

出場は任意であるため、結構「夏の大会は出ますが新人戦はパスで。」みたいな学校もある。だから、夏の大会に出る学校数に比べたら、半分くらいではあるのだが。
それでも、関東中の半分なので学校の数は多い。とても。

「迷子になるなこれはw」
「視界うるさ。」
「あはは・・・カラフルですよね、いろんなジャージが・・・」
「んでもでもー、立海は分かりやすいよねー!ほら、黄色だしー--お?」

今、聞き覚えのある声がした。と思って振り返ると、見覚えのある顔も丁度こちらを振り返った。

「あ。」
「あ・・・・」
「あー!何か、千百合っちのことばっかり連れて行く人だー!」
「人を人さらいみたいに言うんじゃねえよ!俺には平川貴也っていう名前があるんだ!」

平川貴也。
彼は今年の夏、城成湘南の選手として出場し、幸村に負け。
それから、もう城成湘南のテニス部は止める、と千百合に言い残していたが。

(ジャージ変わってら。)

城成湘南の水色のジャージとは打って変わって、今平川はあずき色を基調としたグレーが差し色のジャージを身にまとっていた。

ああ、本当に城成湘南じゃなくなったんだな。と、千百合は今、目で見て実感した。

「貴くん、新人戦出るの?」
「ああ。一応出場校が変わったら、また新人扱いになれるらしいからな。」
「良かったねw今日は絶対幸村とは当たらないよw」
「ああ!?嫌味かてめえ!」
「ち、違うんです違うんです・・・」
「いろいろあんのよ。」

平川は対戦した時点で、まだイップスが発動していなかった。だから、幸村と最後まで試合ができた選手のひとりである。

今はもう違う。
今当たったら、あの時無事だったように今度も無事にとはいかない。

別に千百合は平川のことをさして好きでも嫌いでも無いが、流石にテニス辞めちまえとまでは思っていない。だから。

「悪い事言わないからさ。」
「え?」
「もしこれから精市と当たったら、棄権しなよ。今日は新人戦だから絶対当たらないけど、夏はまた当たるかもしれないし。」

もちろん、負けるのは嫌だろう。まして、棄権負けなんて屈辱に違いない。それはわかる。
でも、流石に己のテニス人生と引き換えになんてできまい。これは千百合なりの親切だった。

(・・・ああやべ、もしかして今の優しくしたことになんのかな。精市気にするかな。)

流石にこの程度、いやでも念のため一応、とか内心で千百合が考えていることなど露知らず、平川は若干イラついていた。

逃げるなら今のうちだぜ!みたいな安い煽りじゃないというのはなんとなく空気で分かる。流石に強制イップスなんて非現実的なことを思いついたりはしないが、「マジであいつ強いから、コテンパンにされる前に止めといたら」くらいのことを言われてるんだろうな、というのは察した。

察した上で、平川はそれが気に入らない。普通に気に入らないというのもあるけど、でも。それだけじゃなくて。

「・・・・・・」
「・・・?何?」
「いや別に・・・とにかく。俺は棄権なんかしねえし、そもそも負ける気もねえんだよ。見てろ、次こそ負かしてやる。」
「えー・・・」
「なんだよ、えーってのは!」
「いや無理じゃないと思って。」

平川の顔に青筋が浮かんでいるのが見えるようで、紫希辺りは怒ってる・・・とか思って身を引いてしまうのだが、千百合は平然としている。

どうもこの平川とかいうのは、性根が短気というか。

「まあ良いや。別に棄権するもしないも、好きにしたら良いし。」
「良いのかよw」
「言うだけは言ったもん。それより早く行こ、遅れるとやばい。」
「そーだったー!早く早くー!」
「まあまあ、まだもう少し時間はありますから・・・それじゃあええと、平川・・・くん?私達、これで。」
「ばいばーい!」
「あ、おい・・・」
「何?」

振り向くと、平川はなんだか煮え切らないような顔をしていた。

千百合は「用があるならさっさと話せよ」思考になっていて、気づかないが、紫希と棗ははたと気づいた。

(あれ・・・?お耳が・・・そういえば、首も・・・!?)
(マジかよこいつwマジかwそんなことってあるのかw)

マジかと言いつつ、棗と紫希はもう察しがついた。
赤い耳。赤い首。

彼は、千百合が好きなんだろう。多分。

(そんなお前wえげつないw何もかもが幸村の下位互換みたいなことになってるじゃんwいやまああいつと比べたら、大概の男子は下位互換だけどw)
(え、え、え、もしそうなら早く離れませんと、平川君には申し訳ないですけれど、幸村君のために・・・)

「どったの?」
「早く言えよ。」
「あ、あの!その、私達ちょっと急ぎますので、」
「ごめんねwまた今度ねw」
「あ、おいー--」

逃げるようにして、ビードロズはその場を去って行った。