「ブンブン君、言うねえw」
「でもでも、貴君ってほんとーにゆっきーのこと好きだよねー!千百合っちを呼び出した時も、ゆっきーのこと話してたんっしょー?」
「ああ、まあ。でもあれはほら、精市のことと言うか、自分のことの延長に精市が居たって感じだから。」
(その時はそうだったとしても、今はどうなんでしょうか・・・)
平川に呼び出しされた時の話は知っている。
その時は純粋に、平川は自分のレギュラーの座を守りたくて、自分を追い落とす立場になるかもしれない幸村を邪魔だと思っていたのだろう。
でも今は違う。
幸村を目の敵にしている理由が変わっている。
もちろん、一度実際に相対してみて、負かされたというプライドの話もあるだろう。それは間違いない。でも、それだけじゃない。
今は千百合が。
「・・・・・・」
紫希は首を軽く横に振った。
大丈夫だ。大丈夫。
確かに今までずっと幸村に寄ってくる女の子ばっかり相手にしていて、千百合に寄ってくる男の子というのをあしらった経験は無いけど。
でも、そういう子が居たからと言って、千百合と幸村の仲にはいささかの変わりもないはず。
だから大丈夫。今は試合を見よう。
「40-15!」
3ゲーム目。丸井はすでに王手をかけている。
もしも平川に決め球があったとしても、3ゲーム続けて取られてからの巻き返しは辛かろう。
つまり、勝つ気があるのならこの辺から仕掛けてこないといけない。
(流石にそろそろ来そうだな。)
ラリーをしつつ、平川の様子を伺う丸井だったが。
平川が見たことのないフォームになった。
(来るー--え?)
スパークじゃない。
あれは違う構えだ。
「こんな所で見せる予定じゃなかったんだけどな。」
平川がショットを打った。
来る。来る。
振りかぶる。
「ー--え、」
消えた。
丸井がそう思った次の瞬間、自分の後方からドッ!と音がした。
「40-30!」
「・・・・!」
バッと振り返ると、確かにボールが転がっている。
背後に。
「・・・・・・・」
「”フラッシュ”っていう名前なんだ。どうしてですか?・・・って顔だな。」
平川は不敵に笑った。
「教えねえよ。」
「・・・要らねえよ。」
タネは多分、その内分かるだろう。万一自分にわからなくても、ベンチに居るあの三人のうちの誰かはわかるはずだ。
それよりもだ。
タネがわかったとして、それに対抗できるかが重要なのだ。
「・・・鈴奈、あれはなんだ?」
「ごめん、私もテニスそのものについてはそこまで詳しくないからっていうか・・・」
立海マネジ勢は、皆平川のショットにざわついていた。
そもそも破れはしたが、平川の「スパーク」も関東大会の当時は大分話題になっていた。
ここに来て新技である。しかも、スパークと方向が全然違う。
「・・・勝てるのか、あれ?」
「それは・・・最後になってみないと・・・」