New comers 2 - 7/7


そのままゲームカウントがすすみ、4-3で辛うじて丸井がリードしている、という段階になったころ。

立海勢がタイムを取った。

「丸井、どうだい。何か見解は。」
「・・・多分で良い?」
「ああ、良いよ。」

「途中で加速してんだよな、あれ。」

回転のかけ方だかなんだか知らないが、平川の新しいショットは、打たれて少し経つとスピードを上げるのである。
だから予想してたスピード合わせて返球の姿勢を取ると、急に消えたかのごとく写ってしまうのだ。

「どお?」
「うん。俺達もそう思っていたよ。」
「して、どうするつもりだ。策はあるのか。」

丸井はちょっと視線を彷徨わせた。

「おい!まさか無いなどとは言わんだろうな!」
「あるっての!あるある!ただなあ・・・」
「気が進まないかい?」
「まあ、そんなに確実じゃねえし。あと、あんまりかっこよくねえし。」
「しないのか。」
「する。他に方法もねえもん。」

どんなにかっこ悪くても、負けよりはかっこいい。
丸井のー--というか、立海の共通認識である。

幸村は満足そうに微笑んだ。

「大丈夫だよ。勝てれば、観客からはかっこいいよ。」
「いや、そりゃ幸村君だから・・・」
「丸井もそうだよ。それに、確実じゃないって言うのはそれほど問題じゃないから、実質攻略に問題は無いってことになるね。」
「え、なんで?」
「丸井なら決められるだろう?」

幸村は丸井の器用さを買っている。
こんなところで失敗するような奴じゃない。それを知っているから。

「じゃあ、勝ってきてね。」
「・・・OK!」
「あ。そうだ、それともう一つ。」
「ん?」
「気合の入るジンクスを教えてあげるよ。」
「へ?」




「えー何あれー!あの技ー!どーすんのさー!」
「追いつかれてんじゃん。大丈夫かよ。」
「まさか関東大会からこんなちょっとの間に新技引っ提げてくるとはなあwいやはや・・・」

(丸井君・・・・)

大丈夫なんだろうか。

夏の間に何度も見たベンチタイムが、すごく長く感じる。焦っているからだ。

嫌な方向にどきどきする心臓に気づかないふりをしながら見ていると、とうとう出てきた。
なんだかきょろきょろしてるが。

「ブンブンどったの?」
「何か、気になるんでしょうか・・・」
「コートの調子とか悪いのかねw」
「クレイだしね。」

なんて見ていたら、視線がこっちを向いて。
止まる。

「・・・・!」

全開の笑顔だった。ウインク付き。

「・・・え?」
「おっとwこれは勝ち確宣言ですねw」
「かちかく?」
「あれ。野球で言うホームラン予告みたいな。」
「あ!あれだあれだ、アニメで言う勝利BGM鳴ってるみたいな感じ!」

紀伊梨の言う事は、微妙に違っている。
勝利BGMが「鳴っている」わけじゃない。自分で「鳴らした」のだ。
これで勝てなかったら、超絶最高潮にかっこわるい背水の陣。

「ここでこのムーブはなかなかやるなw」
「逆にちょっと負けるの見てみたい。」
「えー!?駄目でしょ負けたら!」
「大丈夫です。」
「「「え?」」」
「きっと大丈夫です。」

今の笑顔が、いつかのように語りかけてきた。

一番前で、余裕の楽勝で勝つ自分を見ていろと。




「プレイ!」

「・・・ふっ!」
「っ!」

ラリーがまた始まるが、タイムを取る直前、平川は大分「フラッシュ」を使用することへの躊躇いがなくなっていた。
多分直に使ってポイントを取ってくるだろうー--と思った時、案の定平川は「フラッシュ」を打ってきた。

「うら!」

(来た!)

丸井はダッシュで前へ出た。

「フラッシュ」は、打たれてから少し後ー--手元に来る辺りで、加速して視界から外れるショットである。

でも逆に言うと、打たれた直後は普通なのだ。
だから。

「はっ!」

「15-0!」

ドッ!と音がして、丸井のリターンが入った。

「どう?天才的?」
「・・・へえ。そうやって返すわけね。ただ、いつまで持つかだな?」

そう。

丸井のこの、変化前に叩く戦法は、かなり相手に近づかないと決められない。

スピードが乗っている打球を素早く捉える視力。
近づくダッシュ力。
そして何よりー--ネットに近すぎるがゆえに起こりうる、タッチネット(ネットに触る)やオーバーネット(ネットを超えて球を打つ)を避ける体さばきが要求される。

早く叩かなくちゃ。
そう思って接近すればするほど、打球のスピードは上がってコントロールしにくくなり、ラケットを扱いづらくなる。焦ったらペナルティ。ちんたらしてたら「フラッシュ」のえじきという、ぎりぎりのラインを進み続けなければならない。

そういう意味では、ボレーヤーと相性の悪い技とも言えるが。

(それでも。ボレーヤーでも辛いはずだぜ、フラッシュはな。)

そう。
ボレーヤーと相性が悪いといっても、ボレーヤーなら若干対処しやすいという程度でしかない。基本的に対処が難しいことには変わりない。

見せてもらおうか。いつまで持つかな、その集中力。

(・・・とか思ってんのかな。)

丸井は汗が首を伝うのを感じた。

ぶっちゃけ、平川の予測は当たっている。
大分きつい。
四の五の考えないで反応しなくちゃいけないのに、その中でネットに気を張るって、かなり辛い。とんでもない集中力が要求される。

でも、やる。
やるんだ。
やらないと負けるから。

負けられないから。

「次、来いよ。返してやるぜい?」
「・・・お望み通り!」

試合は続く。