New comers 3 - 1/5



「「zzzzz・・・・」」

帰り道。
夕日に彩られたバスの中で、紫希と紀伊梨はもたれ合って眠っていた。
千百合と棗は起きている。

「すこやかですなあ。」
「紫希まで寝てるの珍し。今日さして体力使ってないのに。」
「精神力は使ったんでしょw勝てるかどうかめちゃくちゃ気を揉んでたしw」
「まあね。」
「逆に心置きなく眠れて良かったんじゃないw負けてたらこうはいかんぞw」

あの後、丸井はフラッシュをことごとく打ち返し、立海は1回戦を突破した。
その後の2回戦はオーダーが変わって丸井まで回って来なかったが3タテして勝利し、2回戦を突破して今日は終了した。

丸井が勝ち、仁王が勝ち。
友達が勝利して、ビードロズはそれはもう喜んだ。

明日もあるし、テニス部は部活だしで、面と向かっておめでとうと言う時間は取れなかったけど。

「・・・・・・」
「どした?」
「マネジってずるいよなあと思って。」

こういう時、マネージャーならおめでとうを言う時間が幾らでも取れる。

幸村に対してはこんなこと思わなかったけど、今ならわかる。

幸村は、都度都度時間を作ってくれていたのだ。極力千百合の傍に居てくれた。マネージャーという存在が、千百合の心に影を落とさないようにしてくれていたのだ。

だから、それがなくなるとご覧の通りである。
自分達は、観客席から頑張れー!というくらいしかできない。

そりゃあ、電話だってLINEだって、あるよ。あるけど。

「・・・私らって。」
「ん?」
「もしかして、思ってるより儚い存在なのかな。」
「・・・テニス部の中で軽い的な話?」
「そう。」
「むしろテニス部じゃない身としては大分存在感ある方じゃないのw」
「それ相対評価の話でしょ。」
「まあ。」
「私絶対評価の話をしてんの。確かに、何かと時間割いてもらってるとは思う。思うけど、それはそれとして、マネジってもっと物理的にずっと一緒に居る存在じゃん。」
「まあ、それはそう。」

んん、と呟いて棗がバスの座席の背もたれに背を預ける。

「・・・でも、俺はお前が心配するようなことはないと思うけどねえ。」
「私が何を気にしてるかわかってんの?」
「わかってるよ?紫希が巡り巡って割を食う的な話でしょ?」

そう。
千百合は突き詰めると、紫希が泣かなければ最終的にはそれで良いと思う。
もちろん、じゃあ他の人間なら泣いて良いのかって言われるとそれは別の話になるけど。

でも、紫希はこんなに丸井のことを考えているのに、そのことを相手に伝えるきっかけもないなんてあまりにも歯がゆいと思うのだ。

「まあでも、だからって今更マネージャーになんかなれないっしょ。」
「・・・・まあ。」
「少なくとも今の時点でブンブン君は、ある程度は紫希を特別に思ってる・・・と思うから、それで良いんじゃないのかねえ。」
「覆ったらどうすんだよって話をしてんの。」
「そんな簡単に覆るかあ?って話をしてんの。」
「・・・・・・」
「無いとは流石に言わんけどさ。」
「っていうか、丸井個人の性格としてありそう。って感じ。」
「ああまあ、それを言われるとぶっちゃけ俺もw」

何故なんだろう。

「あいつ軽くない・・・いや、軽いわけじゃないのか。なんていうか・・・」
「あれなのよねw感覚で動いてて、頭で考えてないからw何かパズルのピースがパチッとはまるようなことがあったら、即心変わりしそうでw」
「ああそれそれ。そんな感じ。」

幸村は心変わりなどしないと思う。
性格的に、心変わりなどする余地がなくなってから、好意をアピールする人種だから。

でも丸井は違う。
自分の中で結論に至る前に、体が勝手に動くに任せてしまう。
だからいつか結論が出た時。その結論が親友の方を向いていなかったらと、千百合はそれがおそろしいのだ。

「・・・あー、駄目だ。」
「何急にw」
「精市から、あんまり考えるなって言われてんの。」

でも考えてしまう。丸井のことを。いや、丸井のことをってそういう意味じゃなくてだな。

(マジで、早く結論に辿り着いて欲しいんだけど。)

そう思って千百合は、寝る気はないけど目をつぶった。