「ただいま・・・」
「お帰り可憐ちゃん・・・どうしたの?」
「ちょっと、打ちのめされてっていうか・・・正論が痛くてっていうか・・・」
「?」
「誰や、何や言うて来たん?」
「ううんっ。そうじゃなくて、私が一方的に刺さってるって感じで・・・」
「「?」」
「・・・ううん、良いのっ!それより試合はっ?どうなってるっ?」
「今、D2が終わったわよ。」
「落としてもうたわ。」
「あ、そ、そうなんだ・・・」
そうなんだとは言うが、皆どこか「前哨戦だから」と気楽に思ってしまうのが新人戦の特徴である。実際、新人戦で負けたものは氷帝の「負けたらチェンジ」の氷の掟に当てはまらない。どうせ夏の大会前は再検討される。
まあ、それはそれとして経験に勝る力も少ないので、出られるなら出ておいた方が良いというのも基本的にはあるのだが。
(なのに芥川君ってば・・・はっ!いけないいけない、)
あんまり芥川のことばっかり考えてるわけにもいかない。というか、可憐が心配したって何にもならないのだから。跡部でさえ対処できないことに可憐が対処できるわけもなく。
「しっかし、このまま勝ち進むとちょっと・・・」
「まずいかもしれへんな。」
「棄権して不戦敗しちゃうって、どうかしら?」
「跡部が許さへんやろ、そんなん。」
「分かってるわ、言ってみただけ。」
「えっ?ど、どうして勝っちゃいけないのっ?」
「今日勝ったら明日が、ね。」
「トーナメント表見てみ。まあ、勝つか負けるかは時の運やさかい、100%そうなるとは言われへんけど。」
「・・・・あっ!」
忍足が指で指し示す先。
今日勝てば、明日は都内の学校ではなく、関東の勝ちあがり校と対戦になる。
つまり、立海と再び相まみえることになるかもしれない。
果たして今立海とぶつかることが、いいことなのかどうか。
いや、わかってるのだ。
あの王ならこう言うだろう。
『勝てばいい。簡単だろ?』
そうね、それは正論だ。
でも可憐は性格上、どうしても負けた時のことを顧みてしまう。
あの、連戦連勝負けなし状態からいきなり3タテされた時の、後頭部をがつん!と鈍器で殴られたような重い衝撃。
負けた後の、あのお通夜みたいなムード。
あれをもう一回やることになるかもと思うと、可憐も確かに「いっそ勝ちを譲っても良いから勝負しないというのはアリだな」とか思ってしまう。
まあ、口に出したら最後、跡部からは「寝言は寝て言え」と言われるだろうが。
「そういう意味では、ジローの存在は有難いかもしれへんな。」
「「え?」」
「ジローの態度のことやけど。良い悪いは置いといて、なんであんな風なんやて考えた時に、『なんやかんや言うて負けへんから』ていうのんがあると思うねん。」
「ああ・・・確かにそうかもっ。」
「なるほど。勝っても良いし、負けても本人のためになるかも、ってことね?」
「せや。現状なんやかんや言うて、氷帝でジローに勝てるのんは跡部くらいやさかい。そういう意味でも刺激が足らへんのかも知れへん。」
「そっか・・・」
そう言われると、なんだかちょっと気分が上向きになってきた。
ちょっとあまりにも普段試合してなさ過ぎてピンとこないが、実力だけ見ると、現状芥川は氷帝のNo.2なのである。
そのNo.2を動かすきっかけになるかもしれないと思うと、立海に当たるのも悪くはないと思えた。
「それに、まあ。こんな考え方だと部長様に怒られるけれど、新人戦ってことは立海の三強は居ないわけだから。」
「あっ!そっかそうだね、フルメンバーじゃないんだもんねっ。って、それはこっちもそうだけど・・・」
でも、さっきほどは立海が怖くない。
これならもし負けても、もうパニックにならないで済むかも。
(・・・そういえば、立海の新人って誰なんだろっ?)
立海テニス部には知ってる人も多い。
彼らの中の誰か、新人戦メンバーの椅子を勝ち取ったりしているのだろうか。