新人戦が間に挟まったりしたものの、この時期は基本的に皆忙しい。何故と言って、文化祭がもう目と鼻の先まで迫っているからだ。
皆クラスの出し物に部活の出し物にと、準備に余念がない。
そんな中で、皆で準備しているLHRのこの時に、呼び出しがかかるなんて思ってもみず。
「黒崎さーん。」
「ん?」
「何か、先輩呼んでるよー。」
(先輩・・・)
自分に用事のある先輩と言われても、千百合は一人しか思い当たらない。ベースの師である一条直樹だ。
「一条先輩?」
「んーん、そんな名前じゃなかったよ?えーっと、佐川さんって男子の先輩と、成海さんって女子の先輩。」
「・・・ふうん。」
成海とやらの方は全くわからない。
ただ、佐川の方は心当たりがあるといえばある。多分、現テニス部の部長である。
千百合が重い腰を上げて廊下に出ると、やはり見覚えのある男子生徒が千百合を待っていた。それと、見覚えのない女子生徒と。いや、顔位は見た事ある気もするが。
「ごめんな、黒崎さん。忙しい所を。」
「別に。それより、何の用事ですか。」
「・・・・悪いんだけど、ちょっとついてきてもらえるかな。あんまり人に聞かれたくないもんで。」
千百合は一瞬迷った。
こういう時、不用意についていくとトラブルの元。
ただ。
女子の方はともかく、佐川の方は千百合もまあまあ知っている。
間違いなく所属がはっきりしている。そして、幸村と千百合が付き合っているのも知っているから、千百合に何かしてくる可能性は低い。
「・・・わかりました。」
「ありがとう、助かる。じゃあ行こうか。」
ぐす、と成海が俯いて鼻をすすった。
泣きかけてるようだが、何を泣いているのか千百合にはわからなかった。