Festival of ocean:the day before - 3/4


「か、」
「か、」
「か、」
「「「可愛い~~~~!」」」

「えへへー♪やったあ、紀伊梨ちゃん可愛いー!!!」

B組も今日は前日ということで、衣装からアクセから靴から何から全部揃えて、クラスの全員が一斉に衣装合わせしている。こんな時、容姿に優れる紀伊梨はとてもオーラが大きい。

「可愛い~!やばい~!雑誌からでてきたみた~い!」
「ほら、男子も見なよー!」
「ねえねえ見て見て!紀伊梨ちゃん可愛い?」
「あ、ああ・・・」
「うん・・・」

こういう時、大抵の男子は本気で紀伊梨の美少女ぶりにたじろいでしまう。
紀伊梨自身は全然気が付いていないけど。

「やったー!あ、ねーブンブン!ブンブンもこっち見てよー!」
「ん?」

机に座って(椅子ではない)、衣装のズボン丈をチェックしてもらいながら振り向く丸井。

「どお?可愛い?」
「おう、良いんじゃねえ?」
「やたー!」

流石に今日は沢山言われているから、「可愛いと言え」と詰め寄ってこないらしい。

「写真撮ってグループに上げよっかなー?あ、でも明日のお楽しみの方が良いよね!ねー、ブンブンどっちが良いと思うー?」
「どっちでも良いじゃん?」
「そーだけどー!」
「丸井、右足もうちょっとこっちにして。」
「あ、わり。」

紀伊梨から意識を衣装丈に戻す。
足下で何やらちくちくやってくれてる女子を見て、器用なもんだなあ、なんて内心で思った。

「・・・あのさ。」
「え?ごめんなんて?足もうちょいこっち?」
「ち、違くて!あのさ、その・・・」
「?」
「・・・丸井って、文化祭誰かと回るの?」

丸井は目をぱちくりさせた。

文化祭。
誰かと回るの。

「んー・・・未定っつったら未定だけど、確定っつったら確定みてえな?」
「・・・何それ。」
「今グループでシフト出し合ってっから、それ見てからって感じ。」
「あー・・・そうなんだ。」
「回る?」
「え!」
「多分明日の午前は空いてるし。お前も確かシフト入ってなかったろい?」
「あ、うん・・・うん!」
「OK。んじゃあそうすっか。」

「君はまたそうやって、可愛い顔でえげつないことをw」

廊下から聞こえてきた声に振り向くと、廊下と教室を隔てる窓から棗が顔を覗かせていた。

「ハロウw」
「おう。何?えげつないって。」
「今みたいなことだよw」
「?」
「良いよもう分からなけりゃあw」

丸井はしばしばテニスにおいて自分のことを「天才的」と呼ぶが、棗的にはテニス以外もいろいろ天才的である。例えば今みたく、人をその気にさせることとか。

「で、本題なんだけどここに妹来てない?」
「黒崎?居ねえけど。C組は?」
「居ないんだよねえ。紫希にも連絡とったけど、一緒じゃないって言うし。まあ学校で行方不明もないだろうから、いずれは出てくるだろうけどさ。」
「ふうん。」

「あ、なっちんだー!」

割って入った紀伊梨の声に、千百合が居ないという話題は一気に霧散した空気になった。
居ないのは事実だし、知らないものは知らないから。

それに、棗の言うことは実に正論であった。
校内で行方不明になるなんて、普通は無い。
千百合はぼーっとしてるのが趣味のようなところはあるが、危機管理能力は高いので、何かもし危ない目に遭いそうだったら連絡が来るだろうという油断もあった。

逆に言うと、千百合が「危険だ」と判断しない限り、連絡は来ないのだ。