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「あ、携帯鳴ってるー!」
「誰?」
「俺ー!はい、もしもC~?」
『ジロー。』
誰です、なんて聞かなくても分かる。
「あ、跡部ー!」
『あ、じゃねえあ、じゃ。ったく・・・出て行ってからどれだけ経ってると思ってやがるんだ。』
「えーと・・・?あれ?1時間?2時間?」
「えっ!?嘘、そんな・・・ああああ!」
可憐は絶句した。もうとっくに戻って居なければならない時間になってしまっている。
『はあ・・・で?今何処に居るんだ?要るものは買ったのか?』
「えーとね、今渋谷に居てー。」
『は?』
お前らが向かったのは新宿だろう。
そう問いたくなったが、跡部は直ぐにこれを引っ込めた。
自分も聞いて吃驚した、可憐と芥川のコンビである。23区に居るだけ良しとしようじゃないか。
「でねー、買い物しようと思ったんだけど、お店のシャツの山にぶつかっちゃってさー。」
『桐生だな・・・・』
見透かされている。まあ、これに関しては跡部でなくても部員にはスケスケだろう。
「そんで今、親切な人達に助けて貰った所だC!」
『・・・・・・・・・そうか。』
今の沈黙の中に、紫希と千百合と棗は跡部の苦労をなんとなく察した。
会話は漏れ聞こえてくる程度だが、今の一連の状況報告の中で一切のツッコミを行わない辺りに、対応の慣れを感じる。
『買い物は出来るのか?』
「うん!」
『帰って来れるか?』
「多分?」
『ふう・・・・』
「ご、ごめんね跡部君!」
(電話越しでも溜息が聞こえるわね)
(どんな顔で会話してんのか想像つくなw)
(でも、多分という事はこの辺の方達ではないんでしょうか?)
思い切りこの辺の人達である。悲しい事実だが。
『まあ良い。なら、取り敢えず買い物だけはして其処を動くな。迎えを寄越す。』
「えー、それは無理っしょー。」
『アーン?どういう意味だ?』
「こんな人がいっぱいの所通れないC。跡部んとこの車、あーんなおっきいのにさ。」
『・・・・・』
「すごーい!お迎え来るのー!?」
「しかも通れない程大きい車とかw」
「お金持ちなんですね?」
「非常識って言うんじゃないの。」
「ひ、否定、しづらい、かなー・・・」
金持ちの常識は庶民の非常識。跡部と過ごしていると、多かれ少なかれ人は皆、一度はそう思う。
『しかしそれはそれとして、どうにか学校まで戻らないとならないだろうが。お前ら2人で本当に真っ直ぐ帰って来れるのか?アーン?』
「なんとかなるんじゃないかなー?」
「が、頑張るよっ!今度こそ間違えないで・・・」
『不安しかねえんだが。』
それは聞いてるビードロズ達も思う。
「・・・ねーねー!ちょっと貸して!」
「えっ!?」
「うん?これ?」
「そ!」
「なんて言うか賭ける?w」
「ふふ。皆知ってるじゃないですか。」
「賭けになんないわよ。」
芥川から携帯を受け取ると、紀伊梨は自分の耳に当てた。
「もしもしー?」
『誰だてめえは?』
「紀伊梨ちゃんは五十嵐紀伊梨ちゃんだよ!」
『俺様が知るかよ。』
ごもっともである。
「さっき聞こえてきたんだけどー、学校に?戻るの?」
『・・・俺達は今部活動中なんだ。其処の2人は買い出しだ。』
「あ!なーる!んで、学校って何処にあるの?駅は何処?」
『聞いてどうする。』
「一緒に行ったら迷子にならないんじゃないかなーって思って!」
「ええっ!?」
まさか其処までして貰うわけには、と可憐は驚きの声を上げるが、メンバーの3人は「ですよね」な空気だ。
「紀伊梨ちゃんなら、そう言いますよね。」
「知ってたw」
「はあ。ま、良いけどさ。」
「Eの?」
「まあリーダーがああ言ってるんだしw」
「私達も、用事は終わりましたから。」
「ほんとー?嬉C!」
「私も迷子にはなりやすいけどー、でも紫希ぴょんも千百合っちもなっちんも居るし!」
『・・・・・・・』
「どすか?」
『・・・分かった、頼む。』
「おっけーい!引き受けたざますよー!」
「えええっ!?」
「やったね桐生ちゃん!これで真っ直ぐ帰れるC!」
芥川は無邪気に喜んでいるが。
「も、申し訳ないよっ!ただでさえお世話になったのに、そんな私達の都合で、」
「でももう、話纏まってるわよ。」
「そ、そうなんだけど・・・!」
「私達は構いませんから。」
「諦めなっせw」
「諦め・・・・」
諦めて良いんだろうか。確かに、心強くはあるけれど。
「うん!うん!はーい!」
ぴ、と紀伊梨は携帯を切った。
「おっけーい!じゃあ、お買い物して学校へいこー!」
「あ、あの!」
「うにゅ?」
「ほ、本当に良いのっ?だって、そっちにもそっちの都合が・・・・」
すまながる可憐に、紀伊梨はにこーーっと笑った。
「困ってる人を助けるのはトーゼンっしょ!ね?」
ビードロズの面々を振り返ると、3人もそれぞれに微笑みかけてくれる。
隣の芥川も、可憐と目が合うと嬉しそうに笑った。
「・・・じゃあ、よろしくお願いしますっ!」
おう!とビードロズは声を揃えて返事をした。