「さて。」
佐川が若干ため息交じりに言った。
「イレギュラーが大分入ったけど、今度こそ本題戻るか。」
「・・・・はい。」
一瞬で鳴海の顔が曇った。
さっきまで丸井を応援していた顔が嘘のようだ。
いや。
どっちも嘘じゃないんだろう。
ここまで一瞬で人の顔を変えてしまう、今の状況の方がおかしいのだ。
「・・・・・・・」
今の千百合はお姫様役と言われている。
囚われのお姫様は、悪い魔法使いの手から王子様が助けに来てくれるのを待っている。
でも。
(・・・・魔法か。)
よく恋の魔法がなんだのかんだのと言うが、恋が魔法と言うのなら、別に自分だけがかかってるわけじゃない。
鳴海だってかかっている。
だからこんなことになるのだ。
『・・・・幸村君。準備良いかな?』
「ゆっきー!頑張れー!」
「気をつけてくださいね!」
「怪我などせんようにな。」
「うん。ありがとう。」
そうだ。
千百合を怪我させるわけにはいかないが、同時に自分も怪我するわけにいかない。
丸井のおかげで大体のコースは把握できるかと思ったが、実際はここから見えないことも多く、コースの全貌が掴めたとは言い難かった。
だが、しょうがない。
だからといって行かない選択は無い。そもそも、丸井が先行してくれたのだって、ただのラッキーなのだし。
「良いです。スタートできます。」
『そっか。じゃあ・・・って、言いたいんだけど、ごめん。直前で申し訳ないんだけど、ちょっとだけルールを変えるね。』
「?」
『さっきの丸井君のクリア状況を見ると、幸村君にはちょっと難易度が低いかなって。』
そうだろうな。
と多くの人が納得した。
丸井がちょっと頑張ってクリアしたということは、幸村ならあまり頑張らないで普通にクリアできるだろう。
「・・・コースの仕様を変えるんですか?」
『ううん。それも今更無理があると思う。時間もかかっちゃうし。
・・・だから、幸村君のときは制限時間を3分縮めるね。』
「!」
周り中がどよめいた。
この手のゲームにおいて、3分は普段の3分と価値が違う。
丸井は比較的足を止めないで進んでいたが、それでも残り時間は50秒程度だった。もしも現在より3分縮められたら、丸井はクリア不可だっただろう。
「・・・ねー、やなぎー。3分短くなったら、どれくらい難しくなんの?」
「どれくらいどころの騒ぎじゃないだろ・・・ブンブン君だって成功率70%だったけど、3分縮められたら無理になるんだぞ・・・」
「柳君・・・・」
「・・・ざっと概算だが・・・・
・・・およそ35%。」
「・・・それはテニス部の数値ですか?」
「テニス部では3~5%まで落ちる。これは幸村の数値だ。」
その会話は幸村にも聞こえていた。
35%か。
ということは、ざっくり考えて10回の内3回は成功する。
上等だ。
「わかりました。」
『・・・・・じゃあ・・・・スタート。』