一方丸井は、廊下で固まっていた。
郁も。
ついでに、2人を物陰から盗み見ている報道部の青木もである。
「・・・・俺のファン?」
「・・・まあ、ファンって言う単語を実際使ったわけじゃないが・・・丸井君への態度が悪いからとか何とかで・・・」
「マジ?」
(うっわー・・・・ラブスクープが撮れるかと思いきや、こっち方向に話が飛ぶとはなー・・・)
青木はシャッターを切りながら内心で呟いた。
まさかいじめの告白に立ち会うなんて。いや、許可とってないけど。
(やっかみからの苛めかー・・・良いことじゃないけど、反面良くあることではあるからなー・・・さて。こーいう場合、そのファンから応援されている当の本人のアクションが問題なわけだが?)
「あ!お前もしかして、殴られたりとか蹴られたりとかしてねえだろうな?」
「そ、そこまではされてない!今回は、だが・・・」
「そっか。良かっ・・・いや、良くはねえだろい。んー・・・」
もちろん、この場合丸井が悪いとは言い難い。
丸井は何もしてないし、するつもりもない。
しかし丸井が関係ないわけでもないわけで。
どうしたもんかな・・・と考えていると、郁は小さく言った。
「・・・だから嫌だって言ったんだ。」
「え?」
「こうなるから・・・僕の言った通りじゃないか・・・こうやって身分の低いやつが、高い奴に関わるからこうして苛められるんだ、僕は最初からこうなるって言ったのに・・・!」
これは半分嘘で半分本当であった。
こうなることは予見できていたし、こうなるぞと丸井に言った。それは本当というか、れっきとした事実だった。
だが。
今この状況からこう言うと、「やっぱりひどい目に遭った、マネージャーなんてもう止める」と続くのが妥当な言い方ではある。
でも郁の意図は違う。
郁は、丸井が引き留めてくれるのを待っている。
いや、ただ待っているというより、高い確率で引き留めてくれると踏んでいるのだ。
たとえ自分がやったことじゃなくても、知らねえよ関係ねえよなんて放りだすような性格はしていない。
そのことを郁も流石にわかっていた。
丸井なら言ってくれる。
俺が守ってやる、って言ってくれる。
郁はそう踏んだ。
だから言う気になったのだ。
「・・・・・・」
丸井は考えた。
一瞬だけ。
コンマ1秒過ぎた後には、もう結論が出ていた。
丸井の優先順位は、とてもはっきりしている。
「わかった。」
「わかったってー--」
「とにかく、お前は当分俺と一緒に居ること。OK?」
どきん!と郁の胸が高鳴った。
言われたことが嬉しいからだろうか。
いや、自分の予想に沿った展開になったことによる興奮かもしれない。
どちらにせよ、郁にとっては歓迎すべきことだった。
「・・・大丈夫なんだろうな。」
「大丈夫、大丈夫。そいつら、俺のファンなんだろい?それなら、俺の目の前で妙なことはしねえよ。」
「・・・・まあ、それもそうだろうが。」
素っ気ない風を装うが、郁は内心で嬉しくて仕方がなかった。
そしてそんな2人を、青木はカメラで撮っていた。
そして、絶対バレないような音量でぽそりと呟く。
「・・・今のは、告白か?」
絶対そうとは言えないかもしれないが、そうとっても別に罪じゃない程度な台詞ではある。と思う。
まあ良い。
どうせ、同じこと。
(とりあえず、こういうのはセンセーショナルであれば勝ちだからな。丸井から告白したってことで、見出し組み立てよっと。間違いだったら謝ったら良いし、本当だったらもうけもんだし。)
こういうところが、周りから「モラルに欠ける」と言われるゆえんなのである。
だが、青木はそれに気づいてない・・・わけでもない。
ただ無視するだけ。それだけ。