「はあ・・・」
中間まで来て、幸村は息を切らしていた。
きつい。
3分短縮縛りがとてもきつい。
1個1個の種目は、別に楽勝だ。
でも、それが矢継ぎ早に来るせいで、休んで居られない。
短縮ルートを考えたいけど、それにも時間をあまりかけすぎられない。
しかも、失敗してはいけない。
失敗したからもう一度急いでやり直し、はできない。
種目を見た瞬間種目の意図を理解し、ショートカットを考え反射的に実行し、クリアしたら猛ダッシュで次に移ってまた同じことをやる。
この繰り返し。
瞬発力、体力、筋力、持久力、集中力。
これら全部、一瞬でも切らしてはいけない。
丸井とは大きくそこが違う。
丸井は種目のことだけ考えていればよかった。別に、何に急かされていたわけじゃない。
幸村は違う。
追い立てられている。
それでも最初は体力気力満タン状態からスタートするから、割とサクサク進めた。
でも、進めば進むほど体力は回復の隙を与えられず、苦しくなってくる。
(成功率35%か・・・流石、10回中7回は失敗になるだけのことはあるな。)
良いけど。
気力は満タンのまま、1%も減っていないから。
「・・・次はこれか。」
次は、丸太を組んだような上り坂であった。
こういうの、実は厄介なのである。
簡単は簡単だ。でも、ショートカットできない。
種目上、どうしても短縮できないやつというのは幾つか混じってしまう。
幸村は、それに当たるたびに眉間にしわを寄せてしまう。
幸村が不愉快そうな顔をすることなんて滅多にないので、観客からはきゃあ、なんて黄色い歓声が上がったりもしているが、幸村はもはや聞いていない。それどころじゃない。
ああもう、行儀が悪いなあ、なんて思いながら汗をかいた手の平を服でさっと拭いて、すぐ上る。
足と手を全部使う。
幸いなことに、考え得る限りのトップスピードを出すだけの能力と、方法がわかるだけの頭脳を幸村は持ち合わせていた。
それをフルに駆使して幸村は進む。
進んだ先にしか千百合は居ない。
「・・・・・・」
幸村は一瞬だけゴールを見上げた。
さっきから、実は気になっていることがひとつ。
(千百合は、どうして姿が見えないんだろう。)
鳴海は、幸村の位置から見えている。佐川も。
千百合だけが視認できない。
動くなと言われているのだろうか。
何らかの理由で、見る気にならないのだろうか。
考えている幸村は、まさか首謀者が自分への恋心ゆえにこんなことしてるなんて気づかない。
千百合がそれに気を使っていることも。
加えて焦燥は、幸村の悪い想像を駆り立てる。
元気だなんて嘘なんじゃないか。
本当は何かされてるんじゃないか。
ああ、駄目だ。
なるべく考えないようにしてたけど。
「・・・やっぱり目で見て声を聞かないと、安心できない、なっ!」
上った頂上からジャンプで飛び降りて、幸村はまだギアを上げる。