Festival of ocean:Big stage - 1/7



「どこ・・・どこ・・・丸井くーん!郁ー!」

林は全力で2人を探していた。
幸村が無事ゴールしたのは良いが、固まっていたギャラリーがそれぞれ散会し始めたせいで、人の流れができて周りが見にくい。

「ええと・・・えっと・・・あ!あああ!郁ー!郁居たー、郁ー!丸井く・・・ん・・・」

林は歩みが遅くなった。
見つけた。
見つけたのは良いし、思ってたより近くに来ていたのもわかったけど。うん。

「・・・あ、あのー・・・2人ともー・・・」
「ん?あ、林!」
「鈴奈?」
「あ、はい、林鈴奈です・・・迎えにきたん、だけど・・・」
「けど?」
「・・・その手、何?」

丸井はがっちり郁の手を繋いでいた。
はぐれないようにというのもあるが、それ以上に自分が居るアピールをしておかないと、また郁がいじめに遭うかもしれないからだ。

と。
いう事情なんて、周りの生徒はだーれも、みーんなわからない。
ただ丸井と郁が、2人して帰ってくるのが遅く。
やっと戻ってきたと思ったら、手を繋いでるという、その事実だけ見えている。

ただ、困ったことに事情は話せないのだ。
鳴海もやった気遣いだが、皆の前で苛められてると話すのはどうかと思うとは、丸井も思っていた。
まあ、林だけなら良いとは思うけど、ここには他の関係ない生徒がわんさか居るし。

「ちょっと?」
「ちょっと・・・」
「・・・・・」
「あ、おい!離すなよ!お前、何のためにやってるかわかってんだろい?」
「ああああ、ごめん!ごめん、わかった!聞かない、今は聞かないから!ええと、それよりえーと・・・もうすぐライブだよね!なのに帰ってこないから、私迎えに来たんだけど・・・・」

でも。
何か知らないけど、何か事情があって手を繋いでいるのなら、それは離せないんだろうか。このまま観覧するのか?いや、それ以前に。

「郁、シフトだよね・・・?」
「!ああ・・・そうだったな。」
「そうだ、お前のとこ、出し物何?」
「ええと・・・たこ焼き。」
「たこ焼き・・・」

たこ焼き食べたい。じゃなくて。

(たこ焼きって事は、多分屋台だろい?つまり教室には居ないってことで、苛めてくる奴が外で寄ってくる可能性って・・・あれ、教室とどっちが安全だ?)

微妙なとこだなあ。と考えた丸井は、安全策を取ることにした。

「・・・よし!なあ。」
「な、なんだ・・・」
「シフト代わって貰えよ。」
「え、」
「だって、一緒に居らんねえだろい?」

結局のところ、側に置いて視認しておくのが一番安全なのだ。

ずっとはもちろん無理だけど、取り敢えず今日の所は。
後のことは・・・

(・・・後ねえ。)

「何か言ったか?」
「あ、いや。」
「・・・よくわかんないけど、一緒に居ないといけないの?」
「そう。」
「・・・なんで僕がシフト変わらないといけないんだ。君が店の方にくれば、」
「だーめ。これからライブだから。」
「ライブって・・・」
「今回は絶対見んの!絶対、一番前で。」

ここまで来て見逃しなんてない。
人によっては、彼女が楽しくライブできるのなら、自分は見られなくても良いんだ・・・みたいな自己犠牲精神を発揮するのかもしれないが、丸井にそんなものはない。

口を尖らす郁が何を考えているか、林はなんとなくわかって溜息を吐いた。

「・・・・わかった!じゃあこうしよ!郁と丸井君は、ライブ最前列で見なよ。ね?」
「お前は?」
「私、郁のクラスの子に説明してくるから。任せて、こういうの結構得意だし!」

本当は事情を聞いた上で判断したかったが、もうライブが目と鼻の先まできている。
今頃、楽器の搬入だろう。
ちんたらやってる暇はない。話は後。

「郁もそれなら良いでしょ?」
「・・・まあ。」
「OK!じゃあそれで行くか。頼んだぜい?」
「はーい!」