『風を掴み プロペラー回して!
今日も進んでく!』
ああ。
笑ってる。
笑ってる。
「・・・・・・」
丸井は鼻の奥が痛くなった。
良かったなと心の底から思うのに。
あそこに立つまで、一体どれだけの時間や努力や勇気が必要だったんだろうか。なんて思ってしまうと、今紫希が笑って弾いているだけで、なんだか胸の奥が熱くなってしまうのだ。
なあ。あそこで今キーボード弾いてるやつ、すげえ頑張ってきたんだぜ。
来る日も来る日も練習して。
人前が苦手なのに、青い顔してステージに立って。
何よりも、ビードロズの作詞家たるために。
『唇に!メロディを乗せーて!歌えば!
地平線が近くなる!
ほら!ほらまた、近くーなる!』
観客は皆、わいて手を振っている。
体を揺らしたり、飛び跳ねたり。
口笛を吹いてる者まで居る。
いつもなら丸井も混じるけど、今はそれができなかった。
思うことが次から次へでてきて。
出てき過ぎて、とてもできなかった。