今回のライブは、歓迎会のときと状況がいろいろ変わっていた。
まず、拠点がない。
別にこそこそしなくても、どこで何をしてても別に見咎められることもないからだ。
次に、野外ステージは後夜祭に使用されるため、あまりぐずぐずしていられない。
すぐに楽器の片付けが必要。
そして歓迎会と違い、テニス部の面々だって各々暇じゃない。
そもそもライブの時間を休憩に当てていたから、終わったらシフトに入るというスケジュールにしてる者がまあ多かった。
テニス部はシフト、ビードロズは片付け。
そうやってる間に、もう文化祭はお終い。
ビードロズ一同がライブの成功を喜び、楽器を引き上げて片付けが終わった頃には、後夜祭に突入である。
「わー!すごーい、もう真っ暗じゃーん!」
「あんた暗いの怖いんじゃないの。」
「お祭りは良いのー!」
「でも、マジで暗くなるの早くなったなあwもう18時だぞw」
「18時・・・・!」
紫希ははっとした。
そうだ。
丸井からの手紙。
18時に読めって言われてた。
「あ、あの、すいません私、ちょっと急ぎで教室に、」
「え、どったのどったの?なんでなんで?」
「ちょ、ちょっとお手紙を・・・」
「・・・・あー。あれか。」
「え、何何w」
「何か、丸井から手紙もらってて。ほら、私らのクラスの催しのやつ。」
「今日の18時に見てっていう指定がありまして・・・」
「へー!あ!ライブお疲れ的なこと書いてあるんじゃないー?」
「お。それ割とありそう、珍しく勘が良いじゃん。」
「えへん!って、珍しくないじゃーん!紀伊梨ちゃん!勘には!自信ありです!」
「まあまあwとにかく行っておいでよw」
「はい。あの、いつになるかわからないので、適当に先に行っておいてくださいね。」
「・・・うんw」
「・・・・・・」
「・・・あ、あれ?」
この、「先に行っておいて」という台詞。紫希には実に、いつものこと。
今までだって紫希以外の3人は何度も、「私〇〇してくるので、先に行っておいてください」と言われてきた。
だから紫希に他意はない。
それはわかっているが。
「じゃあ行っとこっかw紀伊梨も見たい奴あるんでしょw」
「うん!紫希ぴょーん、終わったらLINEしてねー!」
「はい。」
「・・・・・・」
「妹もほらwぶー垂れてないでもうw」
「はいはい。」
「あり?千百合っちはゆっきーと遊ばないにょ?」
「ああいや、何かさっきLINE来てて。ちょっと一条郁と用事あるから、その後で合流するって。」
「へー!」
(一条さん?)
(あーあ、とうとう何やら言われんのかなあ、あの子。)
男子テニス部現行部長は、佐川邦夫その人だ。しかしそれとは別に、幸村が実質的な権力を持ち始めていることは皆もうわかっていた。
だからこれは、高い確率で幸村と一条の用事と言うより、テニス部の用事と言う見方をした方が良いと思う。と、棗と紫希は思う。紀伊梨はそこまで考えてないけど。
「まあじゃあ、成り行き任せってことでw」
「後でねー!」
「何か困ったらすぐ言ってよ。すぐ。絶対ね。」
「ありがとうございます。こ、困ったら・・・?」
「いい加減信用してあげなよw」
「最近の方が信用度としては低い。」
「わかるけどw」
「「?」」