Mental care 2 - 1/7


可憐が午前の講義(?)を終えて戻ると、全体の半分くらいの生徒がすでに戻ってきており、顔を寄せ合って昼食のメニューを決めていた。

忍足も、もう戻ってきていた。

「お帰り可憐ちゃん。メントレ、どうやった?」
「お疲れ様っ。メントレ・・・ええと、メントレは、そのう・・・」
「?」

なんと言えば良いのだろうか。
まさか全部言うわけにいかないし。

「えっと、えっと・・・ぐ、具体的なことはお昼から、って言われたかなっ?午前はずっと、お話を聞くみたいな感じで・・・」
「午前中ずっと講義だけ聞いてたん?しんどなかった?」
「あ、ううんっ!あの、講義って言う感じじゃなかったんだよっ!なんていうか、その・・・普通の?お喋りみたいな・・・」
「カウンセリングみたいな感じやろか。」
「それそれっ!うん、確かに・・・」

カウンセリングを受けてる。
という意識は可憐にまったくなかったが、今思い返すと、あれは普通にカウンセリングだった。

カウンセリングを受けてる事を気づかせないあたりが、齋藤の凄い所だったのだ。
ということも、可憐は今思い返して、ようやくわかった。

「どんな先生やった?」
「優しかったよっ!話しやすかったし、言ってることが分かりやすいし、それに・・・」
「それに?」
「・・・そういえばちょっと、榊先生に似てたなあっ。」

あれこそ合宿の時だった。
言い争っていた吹奏楽部の人に向かって、『教師が場を納めるのは簡単だが、それでは本人は納得しない』と言って手を出さなかった榊。

納得。
教育において、このワードを基本として生徒を扱う点は、榊と齋藤は似ている。

「・・・疑うわけやあらへんけど、ほんまに話しやすいん?」
「あ、違うよっ!考え方が似てるだけだよっ!性格は本当に全然違うっていうか、うんっ。」
「ならええけど。」

忍足は榊が別に苦手な方ではない。むしろ、どっちかというと得意寄りではある。
可憐だって嫌いではないし、というより好きだし尊敬はしているけど、親しみやすいか?得意か?と言われるとそれはNO。

「そっちはどうだったっ?内科の方っ。」
「ああ、まあ楽しかってんけど・・・」
「けどっ?」
「・・・・可憐ちゃん。」
「えっ?」
「座敷童て居る思う?」
「・・・・え?」








「ふう・・・」

齋藤はその頃書類を纏め終えて、遅い昼食に取り掛かっていた。

「あ、先生愛妻弁当ですかあ?」
「あはは。そうだよ、ありがたいよね。」
「やだ、私まだご飯食べてないのに、ご馳走様です。」
「そういえば先生、氷帝の生徒さんに講義してたんですよね。どうでした?」
「ああ・・・うん。なんだか懐かしい子だったかなあ。」
「「懐かしい?」」
「若い子見ると思わない?ああ、僕たちもこんなだったなあ・・・みたいなね?」

齋藤はちょいちょい「先生って読めない人ですよね。」なんて言われるが、自分ではそんなこと思ってない。

確かに職業としてはやや特別かもしれないが、自分自身はそんなに特別な人間じゃないと思う。

人並みに恋だって経験があるし、そもそも最愛の妻が居るし最愛の子も居るしなので、恋愛に対して入れ込む人の気がしれない、なんて思わない。
それを踏まえて可憐を見ると、ああ若いなあと思うのだ。

前を見ると辛いことが待っているのに、前を向きたくてどうしようもないお年頃。

(さて、どうしようかなあ。)

困ったさんなのは、自分は可憐のかかりつけ医ではないということだ。

今日だけ。
今日、あと数時間しか時間は無い。

その間にできるだけのことをしてあげねばならない。