Mental care 2 - 2/7


そう思っていた齋藤は、帰ってきた可憐が開口一番言った事に目を丸くした。

「座敷童?」
「はい・・・あ、あのうっ!私が信じてるって言うかその、居ないって言うのはわかってるんですけどっ!そのう、何から話したら良いのか、」
「まあまあ、落ち着いて。最初から話してごらん?」
「は、はいっ!ええと・・・今日一緒に来た友達・・・が・・・」
「うん?」
「・・・そ、その子が好きな人なんですけど・・・」
「ああ、なるほどね。」

友達って言うには微妙なんだろうなあ、と思い齋藤は苦笑する。

「そ、その子が内科を見学しててっ!それで、入院患者さんに、座敷童を捕まえてくれって言われて・・・」
「入院患者・・・ひょっとして、藤居さんかな?」
「ごめんなさい、名前までは知らなくてっ。先生、知ってるんですかっ?」
「そういう患者さんが居る、っていうのは看護師さんが偶に言ってるよ。僕は診たことがないんだけど、年齢とか言ってる内容からすると、多分藤居さんだね。」
「藤居さん・・・」
「それで、桐生さんの好きな彼は、座敷童について知りたがっているの?」
「というか、座敷童を作ろうとしててっ。」
「!へえ・・・」

齋藤は少し目を見開いた。








『座敷童を・・・作るっ!?』
『せや。』
『作るって・・・』
『実際問題、捕まえられへんやろ?そもそもどこに居んねんて話になるし、居ったとしても捕獲は無理や。』
『それはそうだけどっ。』
『ほんなら後はもう、捕まえてきた風を装うしかあらへん。』

忍足の眼差しは、あくまで真剣である。

『・・・こんな言い方ちょっとあれなんだけどっ。』
『うん?』
『どうしてそこまでするのっ?』
『・・・返すようでこういう言い方はあれやねんけど、練習やろか。』
『練習っ?』
『臨床医て、こういうことに付き合うのんも仕事の内なんやろなあて思うて。』

人体は未だに解明しきれていない部分も多い。だから、心の中で思ってる事はばかにできないのだ。

座敷童なんて居ない。
でも、居るとすることで、ひとりの患者が手術に対して、できる!やれる!と思うことができるのなら。

そう思って、忍足は本腰入れて「座敷童探し」を行うことにしたのだった。








「って、言ってたんですけど・・・先生っ?」
「いやあ、ちょっと感心しちゃったねえ。そういうことを言われると、純粋に親切心からどうにかしてあげよう、っていう子は居るんだけど。」

まさか臨床的観点からそんなことを言い出す中学1年生が居るとは。
大体そこに思い至るのは、高校生あたりになってからが普通。

「話を戻そうか。座敷童ね。」
「ご、ごめんなさいっ!関係ないことを言っちゃってっ。」
「いや?寧ろこの場合、当事者の話なんだし、関係はおおいにあるよ。さて・・・」

齋藤はちょっと考え始めた。

「・・・内科の案内担当は、浜田先生だったかな。うん。ちょっと待ってね、連絡するから。」
「えっ?」
「うん?」
「れ・・・連絡して、どうするんですかっ?」
「だって、座敷童を作るんでしょ?それならそれ用に、時間が無いとね。」
「え、えええっ!?」
「誰だっけ、名前?忍足侑士君?抜けさせてもらえるか頼もうか。とはいっても内科の説明もまだあるから、一番最後のアンケートとスタッフ説明の時の時間が良いかな。」
「あの、あの、」
「その間に、桐生さんはメントレの話をしよう。うん、それで良いんじゃない?」
「あのっ!」
「うん?」

なんだかガンガン話が進んでいるが、それで良いんだろうか。
というか、齋藤は座敷童を作るプランについて、賛成なのか。

「せ、先生は座敷童作るっていうのは、良いんですかっ?」
「うん。」

(そういうものっ!?)

衝撃!な顔をする桐生に、齋藤はおかしそうに笑った。

「ちょうど良い機会だし、メンタルとは何か、ってことについて話しながら座敷童のことも説明しようか。」
「は、はいっ!」
「そもそも、医学界でメンタルがなぜ重視されているかっていうと、心と体が繋がっているからなんだ。」
「心と体が・・・」
「うん。だから身体的に健康であっても、精神的に不調が起こっていたら、体もそれにつられて不調になったりするわけだね。で、僕たちが今からやろうとしてるのは、この逆っていうわけ。」
「逆っ?」
「座敷童が居る。つまり、藤居さんの希望を聞いてメンタルを整えることで、体の調子も術前に良くしてあげよう、ってことさ。」
「そ、そんなことできるんですかっ!?」
「もちろん。不調は心に引きずられるのに、好調は作用しないなんておかしいと思わない?」
「た、確かに・・・・」

言われてみればそうなのだが、どうもいまいち信じきれない。
しかし齋藤は穏やかな顔で笑うばかり。

説明してもわからないだろう。と言うよりは、説明しても信じなくて当然という可憐の心理を、わかってくれてるよう。

「じゃ、今日の本題のメンタルトレーニングと行こうか。締めくくりは、座敷童の作成ってことで。」