Mental care 2 - 5/7


さて。
「座敷童を作る」といっても、具体的にどうするかだが。

まあ現実として、座敷童人形なんかを作ったとしても、何かの間違いで壊れたりしたらしまいなわけで。

「忍足君・・・・」
「言いたいことはわかるねんけど。」
「わかるんだったら、もうちょっとどうにかしてくださいっ!」
「堪忍な・・・ふっ、」
「今笑ったでしょっ!もーっ!」

端的に言おう。
可憐は小さい。

部内でもよく小柄だと言われるし、跡部辺りなんてもう普通に「チビ」呼ばわりしてくることもある。
有体に言うと、そのチビっこさを活かす時が今来たわけだ。

「あ、忍足君。いや、ごめんごめん!アンケート思わず読み込んじゃっ・・・ぶふっ!」
「浜田先生。」
「~~~~~!」
「あ、ごめんね!ごめんごめん、その、ほら・・・良い座敷童っぷりで。」
「~~~~もうっ!」

可憐は今、座敷童コスをさせられていた。

多分クリスマスの時かその辺に使ったのであろう、サンタ服。これをちょっと改造して、赤い和服っぽくして、髪飾りもちょちょっとつけて髪型を誤魔化せば、座敷童のできあがり。

多分、実際の座敷童のモデルはもっと小さいだろうが、それはもうしょうがない。これで行くしかない。

「堪忍な。俺やと流石におかしいさかい。」
「ああ、忍足君背が高いもんね。」
「わかってますうっ!」

自分がやるしかない。
わかってるからこそ、可憐は不満たらたらなのである。どうせ逃れられないのなら、愚痴くらい許して欲しい。

「靴はスニーカーで良いの?かな?」
「ええと思いますよ。モデルも多分、そんな変な靴履いてへんやろうし。」
「あと、あんまり変な靴履くと、転んじゃいそうでっ。」
「ああ、そっか。えーと、緩く走るんだっけ?」
「そうです。」

藤居の要望は、座敷童を捕まえる、である。
ただし、本当には捕まらないことはおそらく納得してもらえるだろう。

しかし、堂々と姿を表して話すと本物じゃないと知られてしまうので、それっぽく前を通るのだ。話しかけられても声は出さないで、笑いかけて手を振るレベルで良い。大抵のおかしいことは、「人外だから」で済ませられる。はず。

「今どんな状況ですか?」
「もう生徒さん大体帰ったし、面会時間も終わったよ。だから関係者以外うろついてないし、同じ病室の人には話通してるから、後はもうやるだけ。」
「な、何かあったらフォローしてねっ!助けてねっ!お願いしますっ!」
「それは約束するで。大丈夫、何かあったら俺が悪いんやし。」

そもそも、言い出しっぺは忍足なのだ。
体格の問題上可憐が矢面に立つことになってしまったけど、責任はあくまで自分の側だと忍足は自覚していた。

「いやまあ、本当に何かあったら、どっちかというと内科の俺の責任なんだけど・・・まあ、それは良いや!とにかく、作戦開始で。」
「「はい!」」








「検査?」
「の、結果をですね。今から持ってくるんで、起きといてくださいね。」
「先生が起こしてくれたら良いじゃない。」
「いやあ、そういうわけには・・・」

当然だけど、可憐と言うか座敷童が来た時に、見といてくれなければ意味が無い。ので、こうしてどうでも良い用事を取付け、通路に意識を向けといてもらうのまでがスタッフの役目。

一生懸命「起きといてね?良いね?寝ちゃだめだよ?」と言い含める浜田の背中を、可憐と忍足は廊下の影からそっと見つめる。

「せ、先生が行ったら、すぐ行った方が良いかなっ?」
「いや。寝るのんは怖いけど、ちょっと間空けとかんとなあ。藤居さんの視界に、浜田先生と同時に入ってもうたらあかんさかい。」
「そ、そっかっ。」

ただ歩いて姿を見せれば良いだけなのだが、それだけのことがこんなにも緊張する。

(うう・・・だ、だって、失敗したら・・・失敗っ?)

「忍足君っ。」
「?」
「これって、失敗したらどうなるのかなっ?えっとだから、もし私がただの子供って言うか、座敷童じゃないって気づかれちゃったりした場合って・・・」
「・・・正直言うねんけど。」
「うん・・・?」
「わからへん。」
「・・・えっ?」

忍足は大真面目な顔で言った。

「そもそもやねんけど、ほんまの目的って、座敷童を見せる事とちゃうねん。」
「えっ?」
「ほんまもんのゴールていうんはこの場合、手術に対してできる、ていう気になってもらうことやからな。」
「あ、そっかっ。」
「せやから、さっき可憐ちゃんは『気づかれたりしたら』て言うてたけど、気づかれることが失敗とちゃうねん。ほんまの失敗は、手術なんかもうあかん、て思われてまうことやから。」
「な、なるほどっ。」
「いうことは、つまり可憐ちゃんが座敷童やあらへんて気づかれた時、藤居さんがどう思わはるか、ていうとこが成功か失敗かの分かれ目なわけやねんけど。」
「確かに、それならどっちに転ぶかわかんないなあ・・・」

自分ならどう思うだろうか、と可憐は考え始めた。
要はジンクスのようなもので、「これが見えたら上手くいく気がする」というようなもの。それが実際目の前に表れて、でも本当はそれは用意されたもので・・・

「あ。」
「えっ?」
「合図してはる。」

廊下の向こうで、浜田医師が小さく手を振っている。
作戦開始だ。