同じころ、幸村は大通りを歩いていた。
スポーツショップに行った帰りだった。そろそろグリップテープやばいなと思っていたのだ。
そのまま真っすぐ帰っても良かったのだが、最近ウィンドウショッピングとかも全然していないし。
一瞬千百合に声をかけようかとも思ったけど、なまじ今日は「部活がある」と言ってしまったのが痛かった。幸村も今日は部活だし、と考えて千百合が何か予定を入れてしまっていてもおかしくない。
まあこんな日もあるか、なんて今遠い空の下で部活メイトがまったく同じことを考えていることも露知らず。ちらちらディスプレイのアパレルなんか眺めながら、ゆっくり帰ろうかなとでも思っていた時だった。
「・・・・あれっ?」
大通りの一角で、立ち竦んでいる人が居る。
背が丸まっている。顔色が悪い。
そんなに寒くもないのに、ちょっと震えている気さえする。
立つのが辛そうで、道行く人は皆、一瞬気づかわし気な目をして通り過ぎていく。
あれは。
「おばさん。」
「え・・・・あ、せい、いち、くん、」
黒崎純子。
恋人である黒崎千百合と、親友である棗の母親。
純子は青い顔で幸村を見たり、視線を逸らしたりを繰り返す。
幸村はそれに対して、何も思わない。もう慣れた。
「どこへ、行かれるんですか?」
「あ・・・・・う・・・・」
「何か、ご用事が?それとも、もう終わったんですか?」
「・・・・モールに、行きたくて・・・」
「そうですか。じゃあ、一緒に行きましょう。」
「いや、でも、」
「俺も、今日は結構暇なんです。お付き合いしますよ。」
「・・・・・・・・」
「行きましょう。」
「・・・・・・・・・うん。」
彼女は、一人で長時間外を出歩けない。
そういう母親だった。