Outing 4 - 5/7



「あた!」

ぐら、と来た時紀伊梨は思い切りぶつけた。
隣に居た向日は、ゴン、という景気の良い音を聞いた。

「おい、大丈夫かよ?」
「おおお・・・!ノーガードだったお、超痛いお・・・!」
「お前機敏そうなくせに鈍くせーな。」

可憐もドジだが、可憐とは微妙に違う。
ドジっぽいというより。

「・・・アホっぽい?」
「にゃにおう!?会ったばっかりなのに失礼じゃんかー!」
「でもお前、実際頭良いの?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・良くないけどー!」
「ハハハハハハ!良くねーんじゃねーか!」
「もー!もー!うるちゃいなー!」

遠慮なくケラケラ笑う向日。
此処まで正面から人を笑う人間は立海に居ないので、紀伊梨は生まれて初めて頭が悪いゆえの恥ずかしさを味わった。ちょっとだけ。

「ハハハ・・・あ!悪かったって、そんなヘソ曲げんなよー。」
「ふーんだ!どーせ私は頭悪いですよっ!皆と違っておべんきょー出来ないし、れーぎとかマナーとかもよく分かんないし、げーじゅつも知らないしっ!」
「あ、俺も俺も!」
「んえ?」
「ほら、うちの学校って、でかいし金持ってんじゃん?だから、単に金持ってるだけじゃなくて、けっこーお坊ちゃんお嬢ちゃん育ちの奴らも多いんだよ。」

そして何の気なしに話しかけて、カルチャーギャップにお互い驚くのである。
向日、宍戸、それに芥川はそこそこ裕福とはいえ、商店街育ちの庶民派だ。

「へー!でも私もそーゆーのあるよ!私ん家もお金持ちだし!」

五十嵐家はかなり裕福な家である。

元々そこそこ裕福だったのに加え、商売が軌道に乗り出した頃だった。
紀伊梨の父、竣介の古くからの友人であった幸村の父親の会社が、経営不振に陥った。
それを助けた事で幸村の父の会社は急激に業績を回復し、其処から大口の仕事が入るようになった五十嵐竣介の懐は、更に大きく潤う事になったのだった。

だから幼馴染組の中でも、紀伊梨と幸村の家庭の裕福度と家同士の仲の良さは、他の3人とは比較にならない。
生まれる前からの付き合いなのである。

故に紀伊梨は所謂「御嬢さん」で、幸村は「お坊ちゃん」と言えなくもない。
言えなくもないのだが。

「でもめんどくさいから、おとーさんもおかーさんもそーゆー勉強はさせなかったってー!フルコースの食べ方とかー、ピアノとかバイオリンとかー、」
「家庭教師とか、女子だとバレエとかだろー?」
「そーそー!家もそんなにおっきくないよ!お手伝いさんとかも要らないし!」
「金持ちの「育ち」って、苦労しそーだよなー。俺、ぜってー無理!」
「私も絶対無理ー!」
「だよな!」
「だよねー!」

アッハッハ、と笑いながら意気投合する2人。
微妙に自慢にならない気もしないでもないが、まあそこはそれ。

「そーだ!まだ自己紹介してなかったー!私、五十嵐紀伊梨ちゃんだよ!よろしくねっ!」
「おう!俺、向日岳人な。」
「えー、じゃあ・・・がっくん!どお?」
「ん?別になんて呼んでも良いけど?がっくんってのは昔からちょいちょい呼ばれるしな。」
「おおお!マジかやったー!最近綽名付けても「嫌!」って言われる事ばっかりだったんだよー!」

相手が悪い。
と教えてくれるものはこの場に居なかった。