Cheering song 1 - 1/7


いつの間にか季節は深まり、秋になっていた。

今は10月。
つまり、2学期始まりの9月から、すでに丸1ヶ月経過している。

たった1ヶ月で、郁はすでにストレスフルな状態になっていた。

「・・・・・・・」
「あれ?おっかしーな。ねえ一条さん、ここに置いたタオル知らない・・・一条さん?」
「!は、はい!」
「ここに置いたタオル知らない?」
「え、知りません・・・」
「そう?・・・一条さん大丈夫?」
「え?」
「体調が悪いの?何か、悩みごと?」
「あ、いえ・・・・別に・・・・」
「・・・・そう。」




その会話を、少し離れた所から、幸村は立ち聞きしていた。
真田と柳もだ。

「・・・本当に、いじめが理由ではないのか?」
「まあ、見ようによっては、いじめが理由だと言えなくもない。」
「そうだが、そういうことではなくだな・・・」
「ふふ・・・うん。あれは多分、丸井に近づくなって言われてるのが、ストレスなんだろうね。」

そもそも郁は、丸井の側に居られることを期待して、入部した。

そのことは、多くの人がわかっていた。(真田辺りは未だにピンときてないが)別に態度が多少悪くても、業務をちゃんとやってくれるのなら、皆それで構わなかった。

しかし、構わなかったのは、あくまで部員だけ。外部の人間はおおいに構った。
そして今そのツケで、一条は丸井から離れとけと言われている。

つまり、一番目当てにしてたメリットが、消えてなくなっているわけだ。
モチベーションが下がっても、頷けることは頷ける。

しかし、さりとて郁自身は現状に何もできない。
ここで丸井に寄って行ったら、丸井が好きと公言してるようなものだからだ。
丸井との交流は、ほぼ全部丸井が水を向けてくれていたから成り立っていたのであって。
その丸井が「こういう事情だからしばらく関わらないで」と言われて従ったら、あっという間にご覧の通り。

「丸井自身も、やや窮屈さを覚えてはいるようだがな。」
「まあ、丸井は人懐っこいから。一条さんがどうのというより、友達と思うように関われないのは、面倒なんだろうね。」
「しかし、どうするつもりだ?」
「どうって言うと?」
「実際問題、このままで卒業まで、ずっと過ごすわけにもいかんだろう。」

真田の言う事も、また正論だった。
今やっていることは、いわゆる対症療法。
根本的な解決にはならない。

しかし、この場合根本的な解決もまた難しいのだ。
そもそもいじめなんてものは、本人が辞める気にならなければ、結局解決しないのであって。

(本人の辞める気、か・・・)

「まあ・・・俺もそのことは考えているが、正直解決策はまだ。」
「む!いや柳、お前を責めているつもりではなくてだな。今後の方針として・・・幸村?」
「うん?」
「どうした?何か、考えがあるのか?」
「いや。まだ、考えっていうほど、固まった意見じゃないんだ。それに、どっちにしろ、俺達にはできることがあんまりないしね。当事者じゃないから。」
「む・・・」
「それもそうだな。」
「ただね。」
「「?」」

「今の状態って言うのは、とりあえず膠着状態に持ち込んだだけだから。いずれ決壊すると思うし、その時に問題を片づければ良いんじゃないかな。」

「・・・そうなのか?」
「うん。」
「決壊するときが来ると思うのか?幸村は。」
「うん、俺はそう思うよ。」

真田も柳もそんなことは思っていなかったが、この状態は、長くは続かないと幸村は踏んでいる。
そこまでの堪え性はあるまい。

ほとんど、誰にも。