「ねーねー、桐生ちゃ~ん。最近忍足と勉強してるって本当?」
3日目。
珍しくも起きていた芥川が、部活中に話しかけてきた。
「?うん、してるよっ?」
「本当?ねえねえ、俺も混ぜてもらってE~?」
「えっ?どうしたの急にっ。」
「岳人が捗ったって言っててさ~!俺、今回の範囲あんまり得意じゃなくて。ちょっと厳Cな~って思ってたんだよね~。」
「そっかっ!ええとでも、ちょっと待ってねっ。場所は忍足君の家だから、忍足君に許可をもらわないとっ。」
「そっか~。じゃあ聞いてみる・・・ふあ・・・・ごめん桐生ちゃん、ちょっと後にすゆ・・・」
「・・・私、聞いておくねっ。」
また夢の国に旅立った芥川に、可憐は聞こえようもない声を一応かけた。
忍足は芥川の同行を快く承諾してくれた。
ただ、来て良いよと言ったところで、この男の場合。
「zzzz・・・・・zzz・・・・」
「忍足君、重くないっ?」
「それは平気やねんけど。」
家に着いた所で勉強できるかな・・・と考えるのは、芥川を知っている人なら皆思うであろう。
「神崎さん、今日は遅れんねやったな。」
「うんっ。なんか、お掃除長引いてるんだってっ。あ、私ドア開けるねっ!」
「おおきに。」
芥川をおぶる忍足は、両手が塞がっているので扉を開けるのに難儀する。
なので可憐は自分から扉の開閉を買って出たが、可憐が扉を開ける前に、玄関から足音がした。
「ちわーっす!」
「安音ちゃんっ!?え、ど、どうしてっ!?遅れるんじゃなかったのっ!?」
「いやー、急ごうと思ってたら、ここん家来るまでのショトカ見つけましてー。ピンポン押したら、おばさんが入って良いわよーって。あのー、鍵の?遠隔そーさ?ってやつで?」
お邪魔してやーす☆と悪びれなく笑う安音に、最近は忍足も慣れてきたのでいちいち反応しない。自室さえ荒らされなければ、まあ良い。
「って、あれ?誰すかその金パ。」
「芥川君だよっ。」
「同級生やねん。一緒に勉強したいねんて。」
「寝てますけど?」
「「これが普通。」」
人差し指でツンツン芥川の頬をつつく姿は、微笑ましい・・・というより、幼児が未知の生き物にちょっかいを出している光景に近いものがあり、何か微妙な気分になる。
「とはいえ、もう着いたわけやから起こさなな。芥川。」
「芥川君っ!ついたよっ!勉強しようよっ!」
「zzz・・・z・・・・・」
「ぐっすりせんぱーい!」
「ぐっすり先輩・・・」
「zzz・・・・・・」
「どうします?2階から落とします?」
「駄目だよっ!?何言い出すのっ!?」
「死ぬで。」
「え、死なないでしょー。2階ごときで。」
「飛び降りるつもりやったら骨折で済むけど、寝てる人間は頭から落ちてくさかい。」
「えー。」
「えーじゃないよっ!漫画とかアニメじゃないんだからっ!」
「・・・・ん~?あれ?ここどこ?」
あまりの騒がしさに、奇跡的に起きた芥川が目を開けた。
まだ体は起きていないが。
「はよーっす、先輩!」
「おはよ~・・・ふああ・・・誰?」
「氷帝学園を受験します!神崎安音です!よろしくっす!押忍!」
「あ~、今年受験するんだー?頑張ってね~!まあ、俺幼稚舎からだったから、ちゃんとした受検ってしたことないんだけどさ~。」
「良いっすよねそれー!もー!」
「えーと、神崎ちゃん?は、幼稚舎じゃないの?」
「今、荒瀧小っすね!」
「どこ?」
「えっとー・・・近くにドンキがあってー・・・」
「ひょっとして、新しいアイス屋さんが近くにあるとこ?」
「あ、それっすそれそれ!」
「へ~!でも、あの辺だったら、ちょっと遠いんじゃない?通うの平気~?」
「んー、まあ気合っすよ気合!それに、家はもっと東なんで!高間木駅なんで!」
「あー、乗り換えの面倒なとこだ~!」
「え”!」
「仲良うなったみたいやな。」
「安音ちゃんすごいよねっ。皆とすぐ仲良くなれてっ。」
「せやなあ。」
これは間違いなく安音の才能であろうと思う。